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KOHNAN VIETNAM|ベトナムで活躍する日系企業:リーダーたちの構想 第94回

ベトナム進出から10年を迎えるコーナンベトナムの濱剛志社長

日常を変えるホームセンターへ
感性とデジタルで拓く新時代

ホームセンター大手のコーナン商事がベトナムに進出して10年。全国に16店舗を広げる中、オリジナルの新ブランドを開発し、伸び続けるECへの戦略も欠かさない。濱剛志社長が最近の売れ筋商品と共に事業を語る。

コーナンベトナムのオープニングセレモニーで挨拶するスタッフ

商品から見える消費の変化

濱 元々コーナン商事本社が大阪府堺市にあり、同じ堺市内にベトナム総領事館が所在していたことから、以前よりベトナムとは深いご縁がありました。また、イオン様のベトナム進出も大きな後押しになりました。

 それと、根底にはコーナンの良き企業風土としてチャレンジスピリッツがあります。「チャンスがあれば海外でもいとわない」という気風が根付いており、その情熱がホーチミン市での1号店出店へとつながりました。

 2016年進出当初は、「ホームセンター」業態がベトナムでほとんど認知されておらず、日本の住環境に合わせた商品展開では、なかなか受け入れられませんでした。そこから改めて現地のニーズを徹底的に調査し、試行錯誤を繰り返すことで、ようやく現地のお客様に信頼していただけるお店が実現できたと考えています。

 現在は、コロナ禍を経てお客様の志向や購買意欲が変化したことを実感しており、そうした変化にどう寄り添うかが新たな課題となっています。

コーナンベトナムの売り場に並ぶスーツケース

濱 弊社は日用品やDIY工具、家庭用品、インテリアなど、生活に密着した幅広いカテゴリーの商品を取り扱い、北部と南部を中心に16店舗を展開しています。

 品揃えにおける大きな特徴は独自のブランド戦略にあります。現在、売上の約2割が現地で企画・製造しているベトナムオリジナルの「ストアブランド」(SB)、さらに約2割が日本から輸入しているコーナン独自の「プライベートブランド」(PB)です。この計4割を占める独自商品こそが、「コーナンへ行けば他にはないものがある」という、お客様の来店目的になっていると自負しています。

 また、全体の10〜15%ほどを占める日系メーカー様の商品も重要です。私たちは、高品質な日本の商品をベトナムのお客様に届けたいという強い想いを持っており、弊社の棚を通じて日系企業様のベトナム市場での成長をサポートする、プラットフォームとしての役割も担いたいと考えています。

コーナンベトナムで販売されているペット用品

濱 この数年で強く感じるのは、消費者の「余暇」に対する意識の変化です。欧米や日本のような本格的なDIY文化を根付かせるには、まだ時間を要すると見ています。一方で、経済的なゆとりとともに、趣味や暮らしを彩る商品の売行きが目に見えて伸びてきました。

 変化の流れを辿ると、まずは「アウトドア」が先行し、現在は観葉植物などの「グリーン」、そして「ペット用品」へと広がっています。これらは余暇の過ごし方の中でも、比較的ハードルが低く、始めやすい分野です。

 実際の売れ筋商品にも、その傾向は顕著に現れています。以前からの定番である日用品や寝具に加え、最近では弊社のペット関連商品でも人気商品が育っています。さらに直近では、大ブームとなっているピックルボールなどのスポーツ関連、旅行需要に伴うスーツケースも好調です。

 まずは手軽な初期投資で楽しめるものから始まり、今後はより高価格帯の商品、そしてその先にある「DIY」のような、より深いこだわりを持つライフスタイルを提案していきたいと考えています。

コーナンベトナムで販売されている寝具
コーナンベトナムで販売されているインテリア商品

出店とECの両輪で攻める

濱 近年、私たちは大きく分けて2つの潮流に着目し、中長期的な視点で対応を進めています。1つは「ローカライズの深化」で、昨年10月に新ブランド「Benom」(ビノム)を始動しました。「Beautifully normal」(美しき日常)をコンセプトに、ベトナム人デザイナーを起用し、現地の感性に深く響く商品開発を進めています。

 現在はソファやテーブル、照明といったリビング・ダイニングカテゴリーから展開し、ホーチミン市のサイゴンツーリスト店(旧パークソン店)には、その世界観を体現する150㎡の特設スペースを設けました。

 パートナー企業様との協業からスタートしていますが、将来的には自社開発100%を目指し、ベトナムの暮らしをより美しく彩るブランドへ育てていきたいと考えています。

 もう1つは「デジタルシフト」です。ECの成長スピードには私自身も驚かされています。ShopeeやTikTokを通じた販売は、2022年比で今年末には10倍に達する勢いです。

 背景には、コロナ禍で定着したデリバリー文化に加え、QR決済の普及、さらに昨今ではガソリン代の高騰がこのシフトに拍車をかけています。ベトナムの象徴である「バイクでの買い物」から「スマホで注文」へのシフトが加速しており、今年3月にはEC売上が過去最高を記録しました。

 現在は実店舗以上に丁寧な商品説明を心掛け、スタッフやKOLによるライブストリーム販売にも注力しており、店舗のない地方のお客様にも、弊社独自の商品をお届けできる体制が整っています。

濱 今年も新たに3店舗の出店を予定しており、その後も毎年同数程度のペースで着実に出店を継続していく方針です。まずは現在の基盤であるホーチミン市とハノイの両都市、およびその周辺省をさらに深掘りしていきます。

 中部エリアへの進出については、物流効率や管理体制を考慮すると、「5店舗以上を同時に運営できる体制」を整えることが不可欠です。そのため、現在はECを通じて販売を行い、地域特性を理解しながら最適な進出タイミングを慎重に計っています。

 商品戦略においては、ベトナム社会の「変化」と「不変」の最適なバランスを追求したいと考えています。都市部を中心に進む少子化や晩婚化により、生活には「時短」や「効率化」が求められるようになりました。一方で、週末に親族が集まり食事を共にするような、ベトナムの伝統的な家族の絆は今も非常に尊ばれています。

 私たちは、こうした時代の流れに合わせて「変化に対応すべきもの」と、文化として「普遍に守るべきもの」を見極め、それぞれの家庭にとっての「最適」を届ける存在であり続けたいと願っています。

家族ずれでにぎわうコーナンベトナムの店舗

KOHNAN VIETNAM
濱 剛志 Takeshi Hama
大学卒業後に大手小売業に入社。日本勤務の他にマレーシア、ベトナムに駐在。2017年にコーナン商事に入社し、ベトナムに赴任.現在はベトナム法人会長兼社長とカンボジア法人の会長を兼務。

執筆者紹介

取材・執筆:高橋正志ACCESS編集長)
ベトナム在住11年。日本とベトナムで約25年の編集者とライターの経験を持つ。
専門はビジネス全般。

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