ベトナム北部で古くから親しまれてきた伝統的な凧が、現代の愛好家の間で大型化している。横幅5~7メートルに達する凧もあり、骨組みにゴルフクラブを改造して使用するケースや、凧糸の長さが600メートルを超えることもあるという。
一方、8月にはホーチミン市のタンソンニャット国際空港周辺で、発光装置を取り付けた笛凧が航空機の運航に影響を及ぼす事態も発生した。伝統的な趣味が現代の大型化によって新たな安全上の課題に直面している。
ベトナムの伝統文化「笛凧」
笛凧は、凧と「笛」と呼ばれる音を出す装置を組み合わせたベトナムの伝統的な凧である。特に北部の地域で盛んに親しまれてきた。
ハノイ市では、オージエン郡のバーズーンノイ村が、1000年以上にわたる凧揚げ祭りで知られている。同祭りは稲作文化と結びついた伝統的な祭礼であり、地域の文化的特色を色濃く残している。
ハノイ市人民委員会は2024年初め、バーズーンノイ村の笛凧製作を伝統工芸として正式に認定した。
竹からゴルフクラブへ 大型化する凧
ホーチミン市在住で、長年凧揚げを楽しんでいるグエン・ズイ・フックさん(38歳)によると、伝統的な笛凧は竹で骨組みを作り、薄く軽いベトナムの伝統的な手漉き紙(ゾー紙)を翼部分に使用する。
笛の部分には竹筒を使い、両端を「ヴァン・タム」と呼ばれる丈夫な木材でふさぐ。凧が高く舞い上がり、強い風を受けると笛が独特の音を響かせる仕組みである。1枚の凧に複数の笛を取り付けることもあり、これを「笛セット」と呼ぶ。
一方で、現在の凧愛好家の間では、凧の大型化が進んでいる。横幅は5~7メートルに達するものもあり、凧糸は600メートルを超える場合がある。
大型化に伴い、骨組みには従来の竹ではなく、ゴルフクラブを改造して利用する愛好家も増えている。ゴルフクラブは竹に比べて軽く、耐久性にも優れているためである。海外から輸入した専用の凧骨を使用するケースもあるという。
翼部分には現在、布が使われることが多い。
南部にも愛好家、広い場所で交流
笛凧はベトナム南部では決して一般的とはいえないものの、ホーチミン市にも愛好家のグループが存在する。
愛好家たちは、広く開けた空き地などに集まり、凧を揚げながら交流する。大型の笛凧が上空を舞い、風を受けて独特の音を響かせる光景は、この趣味ならではの魅力となっている。
一方、大型化や高高度での凧揚げは、航空機の運航区域などでは重大な安全問題につながる。
タンソンニャット空港で16便に影響
その危険性が現実の問題となったのが、8月13日夜のホーチミン市である。
13日午後8時ごろ、タンソンニャット国際空港の当直職員が、タムルオン橋周辺の上空でドローンとみられる正体不明の飛行物体を確認した。同地域は航空機の離着陸経路上に位置している。
その後、関係当局が確認したところ、飛行していたのはドローンではなく、タンビン工業団地内の空き地から揚げられた3枚の笛凧だった。凧には点滅するライトが取り付けられていた。
この影響で、航空便16便に連鎖的な影響が発生。8便が着陸前に旋回・待機し、7便が着陸待ちとなったほか、1便は緊急対応としてカムラン空港への着陸に変更された。
警察はその後、航空安全を脅かしたとして、発光装置を取り付けた凧を揚げていた3人を一時拘束した。
伝統文化と航空安全の両立が課題に
地元当局も凧が揚げられていた土地を調査し、住民に対して同場所に集まって凧を揚げたり、その他の飛行物体を意図的に飛ばしたりしないよう注意を呼びかけている。
笛凧は、ベトナムの稲作文化と結びついた歴史ある伝統文化の一つである。一方で、現代の愛好家の間では、ゴルフクラブを利用した軽量で丈夫な骨組みや、数百メートルに及ぶ凧糸など、従来とは異なる大型の凧へと進化している。
伝統的な遊びが現代の技術によって姿を変える一方、その規模が大きくなるほど、航空機の運航など周辺環境への影響も大きくなる。ベトナムでは、笛凧という伝統文化を守りながら、安全に楽しむためのルール作りも重要になっている。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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