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ベトナムで活躍する日系企業|
リーダーたちの構想第57回
PLUS Corporation

1995年にドンナイ省に文具の生産工場を設立し、2003年からは国内販売を始めたPLUS Vietnam Industrial。日本での事業と海外展開、今後のベトナム戦略について、親会社であるプラスの代表取締役社長、今泉忠久氏が語る。

ベトナムから始まる海外事業

―― ベトナム進出の経緯を教えてください。

今泉 プラスは文具の卸売として創業し、1980年代までは一部の自社生産品を除き、OEM生産による多品種のPLUSブランド商品を取り扱っており、本格的なメーカーへの転身が夢でした。それを叶えるための海外工場として、先々代の社長(現会長)がベトナムを選びました。

 1990年代前半は中国進出ブームもあり、取引銀行などからも中国を勧められたそうです。ただ、弊社の企業理念には「ユニークネスの追求」があり、他社の真似事や後追いを嫌う傾向があります。それではトップランナーになれないからです。それもあり当時はインフラ整備も十分でないベトナムに決めたのですが、日系企業の中ではかなり早く、先見の明があったと思います。

 1995年にドンナイ省に現法を設立。翌年ビエンホア工場にて、最初は25人の従業員でステープラー(ホチキス)の生産から始めました。その後に工場は軌道に乗って、2010年5月には同じドンナイ省にヌンチャク第2工場を設立。現在では2工場を合わせて約2000人が、約3500アイテムの商品を生産しています。

 2003年からは文具のベトナム国内販売をスタートします。自分たちで作っている商品を社員に見せたい気持ちもありましたし、何よりこれだけの市場が目の前にあるので、もったいないと思ったのでしょう。当初は苦戦しましたが順調に売上を伸ばし、ラインアップもかなり増えました。

中国の文具店

―― 他国での海外事業はいかがですか?

今泉 日本では文具を、主にオフィス向け(B to B)と一般ユーザー向け(B to C)に販売していますが、ペーパレス化や少子化などから特にB to B市場が縮小してきました。そのため、まずは足元のベトナムから海外市場に出る必要もありました。

 現在ではタイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ブルネイなどのASEAN諸国でも販売しており、主にベトナムから輸出しています。ベトナムと同様に、これらの国で好調なのは修正テープです。ボールペン文化にフィットしたのと、品質の高さ、競合の少なさも理由かもしれません。ほかではレバーアーチなどのファイル、ステープラーやハサミなどの金属製品も売れています。

 ASEAN以外で販売しているのは工場がある中国と、販社がある台湾、北米、欧州です。欧米がまだ食い込めておらず、販路やディーラーの開拓が難しいです。世界でのプラスの認知度を高めて、各市場に深く入っていくことが課題だと考えています。

―― そのための戦略などはありますか?

今泉 今年1月からコーポレートカラーであるブルーを基調とした、「stationery, and beyond」という世界同一のブランドメッセージを発信しています。

 文具は利便性や効率を求めたただの道具ではなく、日々の生活の中での楽しさや幸せを届けたいという思いです。社名の「PLUS」は一般名詞でもあるので、多くの方に弊社の名前とメッセージを伝えたいですし、文具を超えた新しい価値を提供したいと思っています。

 プラスには主に文具などのステーショナリー事業、オフィス家具を中心としたファニチャー事業、企業、学校、介護施設向けの通販サービス等を展開する流通事業の3つがあり、ステーショナリー事業の海外売上比率は40%以上と高い。これをもっと上げていきたいです。

 また、昨年プラスグループ入りしたぺんてる社の海外売上比率は66%であり、約120の国と地域に販路があります。同業の頼りになる先輩として、上下の関係ではなく対等のパートナーとして、今はお互いを知る時期だと思っています。様々な面において、これから徐々にシナジー効果が生まれていくと思います。

修正テープ

新しい事業を考えさせる国

―― 今回ベトナムを視察されて、どんなことを感じましたか?

今泉 久しぶりに工場を見学したのですが、以前は狭いと感じた一人当たりの作業スペースが広くなっており、随所で自動化が進んでいました。また、社員の声を吸い上げて効率化を進める改善活動などもうまく機能しています。改めて感じたのは、ベトナム人は手先が器用なだけでなく多くの知恵を持ち、それをうまく活かせているという強みです。

 ベトナムは文具のみならず数多くの市場が伸びており、若い人が多くて、人口はもうすぐ1億人に届く。他の国に行くと嫌なことに遭遇する場合もありますが、ベトナムに滞在中は1秒もそんなことがなかった。いつも笑顔でいられる、大変魅力的な国です。

ベトナム工場の社員

 弊社の流通事業では、プラス製品の割合は7%ほどで、オフィス向けに多彩な製品・サービスを販売しています。以前に子会社だったオフィス用品などの通販をするアスクルと似た事業で、アスクルとは競合であり取引き相手でもあります。

 この流通ビジネスをベトナムで展開できないかと考えました。こうしたビジネスは海外への展開が難しいケースもあり、実際に撤退している企業もあります。例えば中国は、市場規模は確かに大きいものの競合も多くあり、一筋縄ではいかないのです。

 しかし、ベトナムではユニークな売り方や効率的な配送ができるのではないかと感じました。具体的な案は、まだありませんが、この国の発展と共に新しいビジネスを伸ばせる。そう思わせるほど将来性のある市場ということです。

―― 日本での新しい事業を考えていますか?

今泉 先のように日本ではB to B市場が縮小しており、新型コロナによる在宅勤務の広がりもあって、以前のような回復は難しいと思います。そこでエッセンシャルワーカー向けの商品開発を考えています。例えば、病院、学校、役所などで働く方々に向けた文具で、防水加工のノートや、手袋などもあり得ます。

 プラスベトナムではクリアファイルの原材料であるポリプロピレンを使ったマスクを生産しており、従来の文具の概念にとらわれない開発ができます。まさに、「stationery, and beyond」です。

ポリプロピレンを使用したマスク

 一方、日本では文具のB to C市場は伸びています。特に女子中高生がデザインセンスの良い文具、新しい機能の文具などを購入していますので、そこをターゲットにチャレンジングな商品開発を続けています。

 ベトナムではDXなどデジタル化は進むものの、B to B市場は成長の余地があります。B to C市場では現在はトラディショナルな文具のローカライズが中心ですが、日本での技術と経験を活かせる伸びしろはまだまだ大きい。

 弊社のベトナム現法はグローバルシーンを先駆けており、ベトナムは日本だけでなくプラスの企業文化とも親和性が高いと感じています。この国の文具市場を、プラスブルーで染めたいですね。

今泉忠久 Tadahisa Imaizumi
米国の大学院を修了後、外資系コンサルティング会社を経て、2005年にアスクル入社。執行役員などを経て2013年にプラス入社、2015年に取締役に就任。人事制度の改革、企業理念浸透など経営基盤の強化に従事し、2020年7月より現職。