約20年前に構想が浮上し、その後いったん凍結されたベトナムのニントゥアン原発計画が、再び具体的な動きを見せている。
電力需要の増加に加え、エネルギー安全保障の確保や2050年までのカーボンニュートラル実現が求められる中、ベトナム政府は原子力発電を安定した電力供給を支える基幹電源の一つとして位置付け、2035年の運転開始を目指している。
約20年を経て原発計画が再始動
ベトナムでは2000年代初頭から、長期的な電力需要への対応と電源の多様化を目的に原子力発電の導入が検討されてきた。
調査の結果、当時のニントゥアン省が原発建設地として選定され、2009年には国会がニントゥアン原発計画への投資方針を承認した。
しかし、2016年には経済・財政面などの条件を理由に計画が一時停止された。
転機となったのが2024年11月30日である。国会は決議174/2024/QH15により、ニントゥアン原発計画を再び推進する方針を決定した。
さらに2025年2月19日には、国会が決議189/2025/QH15を採択し、計画への投資・建設を促進するための特別な制度・政策を承認。再始動に向けた法的基盤が整えられた。
2026年3月16日には、首相が平和目的の原子力エネルギーの開発・利用に関する2035年までの戦略、2050年までのビジョンを承認した。
この戦略では、ニントゥアン1原発をフックディンに、ニントゥアン2原発をビンハイに建設し、2035年までに安全に運転を開始することが盛り込まれている。
なお、行政区再編により、計画地は現在の新カインホア省となっている。
ロシアと協力、2つの原発を建設
再始動に向けた重要な節目となったのが、2026年3月23日にベトナムとロシアが締結した政府間協定である。
両国はベトナム国内での原発建設に関する協力協定を締結し、ニントゥアン1原発の建設に向けた基盤を整えた。
公表されている計画によると、ニントゥアン1原発は2基の原子炉で構成され、総発電容量は約2,400MWとなる予定である。
採用されるのは、ロシアが開発したVVER-1200型原子炉である。
同型炉は改良型の第3世代原子炉に分類され、電源を必要とせずに作動できる受動的冷却システムなどを備えている。2011年の福島第一原発事故から得られた教訓も技術開発に反映されている。
ベトナム電力公社(EVN)がニントゥアン1原発の事業主体を務め、国家エネルギー産業グループ(Petrovietnam)がニントゥアン2原発の事業主体となる。
商工省は両プロジェクトの準備段階における関係省庁との調整を担当する。
原子力分野の人材育成も進める
ベトナムは原子力発電に関して、全く経験がないわけではない。
ベトナム原子力エネルギー研究所は50年以上にわたり、原子力技術の研究、教育、利用に取り組んできた。
特にダラット研究炉は1984年から運転されており、科学研究や人材育成のほか、医療用放射性同位元素の製造などに利用されている。
また、これまでに数千人規模のベトナム人技術者、職員、専門家がロシア、日本など原子力産業の発展した国で教育・訓練を受けてきた。
原発建設には高度な技術だけでなく、厳格な安全管理や規制、人材が必要となるだけに、こうした人材基盤は今後のプロジェクトにとって重要な資産となる。
乾燥した南部地域をエネルギー拠点へ
旧ニントゥアン省南部の沿岸地域は、乾燥した気候で日照や風に恵まれ、比較的広い土地を確保できることが特徴である。
これまで農業にとっては制約となってきたこうした自然条件が、近年では再生可能エネルギーを含むエネルギー開発に適した環境として注目されている。
カインホア省の元人民委員会主席で、カインホア知識人協会のファム・バン・チー氏は、原発の立地について、地質、地形、気象、海象、水資源、人口密度など多くの条件を厳格に調査する必要があると指摘する。
そのうえで、ニントゥアン地域について、地盤が比較的安定していること、活断層が少ないこと、沿岸部に位置するため冷却水を確保しやすいこと、人口密度が比較的低く広い土地を確保できることなどを利点として挙げている。
「困難を強みに変えることができる。現在の最新技術であれば、このプロジェクトは成功すると確信している」と述べた。
交通・物流インフラも整備
新たなカインホア省の誕生によって、地域南部の開発空間も広がっている。
原発計画が進めば、周辺ではエネルギー関連産業だけでなく、関連部品、技術サービス、人材育成などの産業・サービス分野の発展も期待される。
交通面でも、南北高速道路、沿岸道路、カムラン国際港、バンフォンの港湾施設、カムラン国際空港などが整備されている。
これらの交通・物流網は、原発建設に必要な大型設備や資材の輸送、専門家の移動などを支える基盤となる。
約20年前に構想され、2016年にいったん停止したニントゥアン原発計画は、現在、法制度、ロシアとの協力、人材育成、インフラ整備などを背景に再び動き始めている。
ベトナムにとって原子力発電は、増え続ける電力需要に対応すると同時に、再生可能エネルギーだけでは補いにくい安定した電力供給を確保するための長期的な選択肢となっている。2035年の運転開始に向け、今後どのように計画が具体化していくかが注目される。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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