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ベトナム、5カ月で138億USDの貿易赤字 「異例の輸入超過」の背景とは

ベトナム国内の製造現場
(C)THANH NIEN

ベトナムは2026年1~5月にかけて138億USDの貿易赤字を記録した。前年同期は51億USDの貿易黒字であり、短期間で大幅に状況が反転したことから、市場関係者の注目を集めている。

近年のベトナムは輸出超過が常態化していたため、これほど大きな輸入超過は極めて異例の現象と受け止められている。

4月・5月の輸入超過が急拡大

統計局(財政省)によると、4月の貿易赤字は32.8億USD、5月は52.1億USDに達した。

その結果、1~5月累計の貿易収支は138億USDの赤字となった。一方、前年同期は51億USDの黒字であり、1年間で約190億USDもの差が生じたことになる。

中東情勢と資源価格上昇が輸入増加を後押し

商工省輸出入局のチャン・タイン・ハイ副局長は、輸入超過の主因として中東情勢の緊迫化を挙げる。

紛争の影響でエネルギー供給が不安定となり、原油やエネルギー関連製品の価格が上昇した結果、エネルギー輸入額が拡大した。

さらに原油高は化学製品、プラスチック原料、鉄鋼などの価格上昇にも波及し、これらの輸入額増加につながった。

FDI企業が原材料と部品を積極調達

輸入増加のもう一つの大きな要因は、外資系企業による生産準備である。

特に電子機器やコンピューター部品分野のFDI企業は、原材料や部品の輸入を拡大し、価格上昇リスクに備えた在庫確保を進めている。

また、FDI資金の流入が引き続き活発であることに加え、デジタル化や科学技術分野への投資拡大を背景として、高度な機械設備や電子部品の輸入も増加している。

半導体・インフラ投資が輸入を押し上げ

経済専門家のレ・バー・チー・ニャン博士は、今回の輸入超過には構造的な要因があると分析する。

第一に、ベトナムの製造業は依然として輸入原材料や部品への依存度が高い。特にハイテク、半導体、電子機器分野へのFDI投資が拡大する局面では、輸出より先に設備や部材の輸入が増える傾向がある。

一般的に、新規投資から実際の輸出増加までには3~6カ月程度のタイムラグが発生するという。

地政学リスクへの備蓄需要も

第二の要因として、企業による原材料の備蓄拡大が挙げられる。

中東情勢やロシア・ウクライナ情勢に加え、米国や欧州連合(EU)で保護主義的な通商政策が強まる可能性を見据え、多くの輸出企業がサプライチェーンの混乱に備えて在庫を積み増している。

「将来成長への投資」との見方も

さらに、大規模インフラ、再生可能エネルギー、半導体、デジタル化プロジェクトの本格展開に伴い、高額な生産設備や技術ラインの輸入も増加している。

これらは消費財ではなく、生産能力を向上させるための長期投資であり、将来の輸出拡大につながる可能性がある。

グエン・クアン・フイ氏(グエンチャイ大学財務・銀行学部エグゼクティブディレクター)は、現在の輸入の大部分が生産・輸出・投資向けであることから、今後高付加価値製品の輸出増加につながれば、現在の貿易赤字は「将来成長への投資」と評価できるとの見方を示した。

課題は高い輸入依存体質

一方で、今回の輸入超過はベトナム経済の構造的課題も浮き彫りにしている。

多くの産業で原材料や部品の国産化率が依然として低く、生産活動が海外サプライチェーンに大きく依存しているためである。

また、輸入超過が長期化し、輸出回復が遅れた場合には、為替相場や国際収支、外貨市場への圧力が高まる可能性も指摘されている。

「警戒は必要だが悲観は不要」

専門家らは、138億USDの貿易赤字を直ちに「危険水域」と判断する必要はないとみている。

韓国や中国など、工業化に成功した国々も発展初期には設備投資や産業育成のために長期間の輸入超過を経験した。

ただし、今回の状況はベトナムにとって産業構造改革を進める重要な局面でもある。国産化率の向上や持続可能なサプライチェーンの構築を進められるかが、今後の成長の鍵となりそうだ。

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