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ベトナムが「低空経済」本格始動 ドローン活用で100億USD市場創出へ

ベトナムでのドローンの農業活用実証実験の様子
(C)THANH NIEN

ディエンビエン省が全国初のサンドボックス制度を導入

ベトナムで無人航空機(UAV)を活用した「低空経済(Low-altitude Economy)」の育成が本格化している。

北西部のディエンビエン省人民委員会はこのほど、低空経済分野におけるデジタル技術サービスの実証実験(サンドボックス)を正式に承認した。

実証期間中には約6,000回の飛行を実施し、安全運航率99%以上を目標としている。

農業と医療分野を中心に実証が進められ、茶葉栽培地域やコーヒー農園、マカダミア栽培地帯、水田地帯などでドローン活用が検証される。

医療分野では遠隔地の診療所と医療センターを結ぶ緊急輸送ネットワークを構築し、医薬品や検体の輸送に利用する計画である。

山岳地帯で高まるドローン物流への期待

山間部が多いディエンビエン省では、従来は数時間を要した医療物資や救援物資の輸送を数十分まで短縮できる可能性がある。

今回の取り組みは、ベトナムで初めて低空空域向けに設けられた法的実証制度となり、安全保障への配慮を維持しながら商業利用モデルを検証する試みとして注目されている。

世界の低空経済市場は2035年までに約7,000億USD規模へ拡大すると予測されており、ベトナム国内市場も約100億USD規模に成長する潜在力を持つとの見方が示されている。

農業分野で生産性向上とコスト削減

投資促進会議で講演した低空経済連盟(LEAP)の会長であり、FPTの最高経営責任者であるグエン・バン・コア氏は、ディエンビエン省で実施したドローン活用実験の成果を紹介した。

実証では、農薬散布時間が1ヘクタール当たり4時間から10分へ短縮されたほか、種まきや肥料散布能力も1日40~64ヘクタールまで向上したという。

5万1,000ヘクタール以上の農地を対象にした試算では、

  • 農業コストを15~20%削減
  • 年間約6,200万立方メートルの節水
  • 人件費を30%削減
  • 農産物物流コストを40%削減

といった効果が見込まれている。

農家所得は年間1ヘクタール当たり900万~1,800万VND増加し、省の域内総生産(GRDP)を年間約2兆6,300億VND押し上げる可能性があるという。

ドローン物流も実用化段階へ

今年2月には、ホーチミン市科学技術局とVietnam Postが連携し、カンゾー地区とブンタウ地区を結ぶ海上ドローン配送ルートを開設した。

同路線はベトナム初の海上無人郵便ルートであり、片道12キロメートル以上を約15分で飛行する。

従来の輸送方法と比較すると輸送時間を80~90%短縮できると試算されている。

将来的には1日当たり3,000~5,000件の小型郵便物配送への対応が想定されている。

「空のインフラ」が新たな成長エンジンに

経済専門家のチャン・アン・トゥン氏は、低空経済とは単なるドローン利用ではなく、「地上交通の上空に新たな流通レイヤーを構築すること」だと説明する。

低空経済の主な活用分野として、

  • 精密農業
  • 緊急医療輸送
  • 災害監視
  • デジタル地図作成
  • 物流配送
  • 将来的な空飛ぶタクシー

などを挙げている。

山岳地帯や離島が多く、地域物流コストの高いベトナムにとっては、従来インフラでは解決が難しかった課題を克服できる可能性があると指摘する。

成功の鍵は制度整備と運営基盤

一方で専門家は、低空経済を単なるデジタル化施策に終わらせないためには、

  • 低空飛行に関する法制度整備
  • 地域レベルの航空管制システム
  • 専門事業者の育成
  • 持続可能な収益モデルの構築

という4つの条件が不可欠であると指摘している。

政府は近年、UAVや超軽量航空機に関する規制見直しを進めており、ベトナム共産党中央政治局の決議第79号でも、低空経済や航空宇宙産業を戦略的新産業として位置付けている。

ディエンビエン省で始まった実証制度は、ベトナムが新たな成長エンジンとして低空経済を育成できるかを占う試金石となりそうである。

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