海外就労に数億VNDの負担
ベトナムでは、海外で働くために労働者が3~4億VND(約170万~230万円)もの費用を負担するケースがあり、その内訳や資金の流れを明確にすべきだとの声が国会で上がっている。
9月10日に開かれた、海外で働くベトナム人労働者に関する法律改正案の審議で、ハティン省選出のチャン・ディン・ザー議員が問題を指摘した。
ハティン省内務局によると、現在、同省から海外に滞在する労働者は約1万1,000~1万2,000人に上る。海外渡航の目的は、労働契約に基づく就労だけでなく、親族訪問や治療、留学後の就労など多岐にわたる。
ザー議員は、ハティン省から海外に渡った労働者の中には、数カ月働いた後に契約を離脱し、非合法な形で就労するケースもあると説明した。
こうした問題を背景に、一部の海外労働市場ではハティン省を含む中部地域の一部地方からの労働者を受け入れなくなるケースもあり、規則を守って働く労働者にも影響が及んでいるという。
「その費用はどこへ行くのか」
一方、より大きな問題として指摘されたのが、海外就労に伴う費用である。
ザー議員によると、制度上、手数料が無料または非常に低額に設定されている国・地域であっても、実際には労働者が3~4億VND、場合によっては数十億VNDもの費用を負担するケースがあるという。
同議員は国会で、「これらの金額はどこへ行くのか」と問題を提起し、法改正を通じてこうした状況を可能な限り抑制する必要があると訴えた。
海外就労は、ベトナムの地方にとって重要な所得獲得手段の一つである。特に地方出身者にとっては、海外で得た収入が家族の生活改善や住宅建設、教育費などにつながるケースも多い。その一方で、渡航前に多額の費用を負担する仕組みは、労働者側に大きな経済的リスクを負わせることになる。
国による一律監督から「リスクベース」へ
こうした問題への対応として、ザー議員は、海外就労者に関する国家データベースを整備し、関係省庁や地方自治体の間で情報を共有することが重要だと指摘した。
さらに、海外で労働法に違反した労働者に対して、より厳しい措置を設けることも提案した。具体的には、海外で法律違反をした労働者について、一定期間の出国禁止措置を適用する案を示した。
これに対し、ビンロン省選出のタック・フオック・ビン議員は、海外就労市場が拡大する中で、違反が発生してから行政が対応する従来型の管理では不十分だと指摘した。
同議員が求めたのは、企業や事業者をリスクの程度に応じて監視する「リスクベース」の事後チェックである。
具体的には、
- 過去の違反歴
- 労働者からの苦情・相談
- 労働者から徴収した費用と返金状況
- 契約期間終了後に帰国する労働者の割合
- 不法滞在の状況
などを指標として活用する。
複数の異常な兆候が同時に確認された企業については、システムが自動的に監視レベルを引き上げ、関係当局に情報を送って検査・処分につなげる仕組みを構築すべきだとしている。
「多数の労働者が費用を支払った後、あるいは海外へ渡航した後になって初めて介入するのでは遅い」という考え方である。
海外就労者データベースを活用
審議の最後に説明したグエン・ティエン・ハイ内務相によると、契約に基づいて海外で働くベトナム人労働者のデータベースは2015年から構築・運用されており、現在も機能の強化が進められている。
同データベースを利用した行政手続きは年間8万件以上に上るという。
内務相は、国内での渡航前相談から海外での就労期間中まで、労働者の権利と利益を守るためには、関係機関の連携によるリスク予防が重要だと説明した。
また、改正案には、海外にいる労働者を迅速に支援できるよう、送り出し企業に対して海外での代表者の設置を義務付ける規定も追加されている。
問われるのは「渡航後」ではなく「渡航前」の管理
今回の議論で注目されるのは、海外で違反した労働者への対応だけではない。
むしろ、労働者が海外へ渡航する前に、どの企業を通じて、いくら支払い、どのような契約条件で渡航するのかを行政が把握できる仕組みを強化しようとしている点が重要である。
特に、制度上は低額または無料とされる市場で、実際には数億VNDもの費用を労働者が負担しているのであれば、その差額がどこで発生しているのかを透明化する必要がある。
海外就労市場の拡大に伴い、ベトナムでは今後、単純に送り出す労働者の人数を増やすだけでなく、送り出し企業の費用徴収、契約内容、労働者支援まで含めた管理体制の整備が重要な課題となりそうだ。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
ベトナム進出支援LAI VIEN



















