ベトナムが2045年までに先進国・高所得国入りを目指すなか、科学技術、イノベーション、デジタル化を軸とする経済成長モデルへの転換が急務となっている。従来の資本、労働力、天然資源、受託加工に依存した成長から脱却し、労働生産性と技術力を高めることが求められている。一方、研究開発(R&D)への投資不足や資金配分の非効率性、データセンターなどデジタル基盤の整備が課題となっている。
2045年の高所得国入りへ、成長の原動力を転換
ベトナム共産党の第19号決議(19-NQ/TW)は、同国の発展モデルを大幅に刷新し、新たな成長の原動力を確立する方針を掲げている。
2030年までに、新たな発展モデルの基盤を整備し、制度改革、現代的な国家統治、科学技術、イノベーション、戦略的インフラ、高度人材、成長を牽引する企業の育成で飛躍を目指す。2035年までには、自立性、創造性、人間性、持続可能性、国際統合を備えた発展モデルへの移行をおおむね完了する計画である。
その先には、2045年までに先進国・高所得国となる目標がある。さらに、2030~2130年の100年間を見据えた国家発展の基盤づくりも課題となっている。
ベトナム財政学院のブー・シー・クオン副教授は、長期的な経済成長において科学技術とイノベーションが重要な役割を果たすと指摘する。近年、ベトナムでもデジタル化とともに、これらが経済成長の中心的な推進力となっている。
同氏は、今後の成長モデルを転換するうえで、必要な資金をどのように動員し、効果的に配分するかが重要な政策課題になると述べている。
デジタル経済とグリーン成長への対応が不可欠
経済専門家のレー・スアン・ギア博士は、世界経済が工業資本主義からデジタル技術を基盤とする経済へと移行しつつあると分析する。デジタル技術に加え、環境負荷の低減やグリーン経済への対応が企業の競争力を左右する時代になっているという。
ベトナムも、デジタル化、人工知能(AI)、グリーン経済を組み合わせた成長モデルへの転換を進めなければ、国際競争力が大きく低下する恐れがある。
例えば、環境や持続可能性に関する国際基準を満たせない製品は、海外市場へのアクセスが難しくなる可能性がある。こうした対応は、世界的な潮流に追随するだけでなく、国際市場で高まる要求に応えるためにも必要となる。
イノベーション指数は12年間で32ランク上昇
ベトナムのイノベーション力には、改善の兆しも見られる。
世界知的所有権機関(WIPO)の「グローバル・イノベーション・インデックス(GII)2025」によると、ベトナムの順位は2013年の76位から2025年には44位へと上昇した。2022年の48位からも改善しており、2024年と2025年は44位を維持した。
WIPOは、ベトナムを2013年以降にGIIの順位を大きく改善させた中所得経済9カ国の一つに位置付けている。
2025年のベトナムのスコアは37.1点で、低中所得経済37カ国のうち2位だった。特に注目されるのは、イノベーションへの投入と成果の順位に差がある点だ。投入面では50位にとどまる一方、成果面では37位となっており、限られた資源から比較的高い成果を生み出していることがうかがえる。
スタートアップを取り巻く環境も拡大している。ハノイやホーチミン市の起業エコシステムに加え、国家イノベーションセンター(NIC)などが企業、投資家、専門家、大学の連携を促進している。
金融・銀行分野ではデジタルバンキングや電子決済、フィンテックが普及し、電子商取引ではデジタルプラットフォームやテクノロジーを活用した物流が発展している。農業でも、IoT、センサー、ビッグデータ、自動化技術の導入が進んでいる。
研究開発投資の不足と資金配分の非効率性が壁に
こうした進展がある一方、技術的な自立や高付加価値製品の創出に向けては、研究開発への投資拡大が欠かせない。
クオン副教授によると、ベトナムでは科学技術分野への投資について、研究インフラ整備などの投資支出と研究活動への経常支出を含め、GDP比で最低2%を充てる方針が示されている。近年は3%への拡大も求められている。
ただし、2024年の実績は、科学技術分野への予算配分が国家予算の1.97%にとどまったという。記事ではGDP比の投資目標と国家予算に占める配分比率が別々に示されているため、両者は区別して見る必要がある。
課題は資金の規模だけではない。資金が限られた分野に分散し、行政手続きも複雑なため、研究助成の規模が小さくなり、資金の活用効率も十分に高まっていない。
公的な研究開発投資の不足は、研究設備や試験施設、試作品の開発環境の整備を妨げ、研究成果の商業化や高度技術分野への投資誘致にも影響する。
特に中小企業は、手続きの煩雑さ、コストの高さ、融資条件の魅力不足、支援制度に関する情報不足などから、支援資金を利用しにくい状況にある。科学技術分野の資金調達市場やベンチャー投資も十分に発達しておらず、税制面の優遇措置も明確な効果を生み出すには至っていない。
2024年12月22日付の第57号決議(57-NQ/TW)は、科学技術、イノベーション、デジタル化に向けた資源の動員と活用について新たな戦略的方向性を示した。今後は、予算の拡大だけでなく、企業の研究開発を後押しし、資金が実際の技術開発や事業化につながる仕組みを整えられるかが問われる。
AIの発展にはデータ基盤と電力の確保が必要
ギア博士は、ベトナムの技術基盤を強化するうえで、国家規模のデータセンター整備が重要な課題になると指摘する。
デジタル経済の発展にはデータが不可欠であり、AIの開発にも大量のデータが必要となる。十分なデータ基盤がなければ、AIの開発や活用を本格化させることは難しい。そのため、データの蓄積、データサイエンスの発展、データ管理能力の向上に投資する必要がある。
同氏は、米国には数千カ所、中国にも数百カ所のデータセンターがある一方、ベトナムはまだ整備の初期段階にあり、システムの拡充が必要だと説明する。また、データの利活用に当たっては、公平性と安全性を確保することも重要になる。
ただし、データセンターやAI基盤の整備には大量の電力が必要となる。デジタルインフラへの投資を進める際には、電力供給の確保やエネルギーインフラの整備も並行して進めなければならない。
ベトナムが目指す成長モデルの転換は、単にITやAIを導入するだけでは実現しない。研究開発への資金供給、企業の技術革新、データ基盤、電力供給を一体的に整備し、技術を生産性の向上と高付加価値の創出につなげることが、2045年の高所得国入りに向けた重要な条件となる。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
ベトナム進出支援LAI VIEN




























