ASEANは自らの未来をどう描くのか
6月9日、ハノイで開催されたASEAN未来フォーラム2026(AFF 2026)の開幕式において、ベトナムのレ・ミン・フン首相が基調演説を行い、ASEANが今後目指すべき3つの戦略的方向性を提示した。
今回のフォーラムは「共通の未来をともに形づくる―平和、繁栄、人間中心の発展」をテーマに開催された。
レ・ミン・フン首相は演説の冒頭で、
「変化の激しい世界において、ASEANがどのように適応するかだけでなく、21世紀の未来をどのように自ら形成していくのかが問われている」
と述べ、ASEANが受動的な存在ではなく、国際秩序形成に積極的に関与するべき時代に入ったとの認識を示した。
約60年で築いたASEANの最大の成果
フン首相は、1967年の創設から約60年にわたるASEANの歩みを振り返り、その最大の成果は人口約7億人の市場規模や経済成長ではなく、多様性を維持しながら信頼と協力を築いてきたことにあると強調した。
また、今後の世界は、
- 人工知能(AI)
- データ
- デジタル技術
- グリーン転換
によって国際競争のルールそのものが再定義される時代になると指摘した。
その中で優位に立つのは資源の豊富な国だけではなく、新たなルールや基準づくりに参加できる国や地域であるとの考えを示した。
ASEANが目指すべき3つの戦略ビジョン
① 世界の潮流を受け入れるだけでなく形成する存在へ
首相は第一の目標として、ASEANが世界の変化に追随するだけでなく、その方向性を形成する主体になるべきだと提唱した。
近年の世界では地政学的対立や保護主義の拡大が進んでいる。
そのためASEANは、
- 国際ルールづくりへの参画
- 新たな協力枠組みの構築
- 国際法に基づく紛争解決
において、より大きな役割を果たすべきだと述べた。
フン首相は、「ASEANは対話の中心であり、協力の中核であり、信頼の拠り所でなければならない」と強調した。
② 生産拠点からイノベーション拠点へ
第二の戦略として、ASEANを世界の製造拠点からイノベーション創出拠点へ進化させる必要性を訴えた。
首相は、
- 技術を消費する地域ではなく創出する地域
- サプライチェーンが通過する場所ではなく価値創造の中心地
になるべきだと指摘した。
その実現に向けて、
- 科学技術投資
- イノベーション推進
- デジタル経済
- 高度人材育成
を強化する必要があると述べた。
また、ASEAN独自の価値観を反映したデジタル・テクノロジーエコシステムの構築を目指すべきだとの考えも示した。
③ 人々のための共同体へ
第三の戦略として、ASEANを単なる国家連合ではなく「人々の共同体」へ発展させる必要性を挙げた。
首相は、「発展戦略の最終的な目的は経済成長の数字ではなく、人々の生活の質である」と強調した。
さらに、
- 格差を拡大するイノベーションは真の進歩ではない
- 包摂性を欠く成長は持続可能ではない
と指摘した。
ASEANの成功はGDPだけでなく、
- 若者への機会提供
- 女性の活躍促進
- 社会的弱者の保護
- ASEAN共同体への帰属意識
によって測られるべきだと述べた。
ASEAN2045に向けたベトナムの立場
レ・ミン・フン首相は、これまでのASEANが「違いは分断を意味せず、統一は多様性を失わせず、統合はアイデンティティを損なわない」ことを世界に示してきたと評価した。
その上で今後は、団結と自立性を備えたASEANが世界の平和と発展に積極的に貢献できることを証明する時代になるとの見方を示した。
首相は最後に、「ベトナムの未来はASEANの未来と結びついている」と述べ、ベトナムが今後もASEAN共同体の発展に積極的に貢献していく方針を改めて表明した。



















