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ベトナムは「次のアジアの虎」になれるか 半導体・AI・インフラ投資で地域大国への期待高まる

サムスンベトナムの工場内の様子
(C)THANH NIEN

海外メディアが注目するベトナムの成長力

近年、国際メディアでベトナムに対する評価が大きく変化している。かつては低賃金労働力を武器とする生産拠点として紹介されることが多かったが、現在では「次のアジアの虎(Asian Tiger)」の有力候補として注目を集めている。

5月18日付のマレーシアメディア「Edge Malaysia」は、ベトナムが高い国内貯蓄率、外国直接投資(FDI)の積極的な受け入れ、輸出主導型工業化という、従来のアジアの虎に共通する条件を備えていると指摘した。

同記事では、輸出構造が大きく変化し、製造業やハイテク製品の比率が急速に高まっていることを評価。世界的なテクノロジー企業の進出により、ベトナムはグローバルサプライチェーンの重要拠点になりつつあるとしている。

また、若く豊富な労働力や、2024年時点で公的債務比率が32.9%と比較的低水準に抑えられている点も成長要因として挙げられた。

「国家主導」から「発展支援型国家」への転換

カナダのThe McGill International Review(MIR)も年初の分析記事で、ベトナムを「次のアジアの虎」の有力候補と評価した。

同誌は、ベトナムの発展モデルについて、

  • 国家が重要産業を管理・統制する体制
  • 中国と米国の双方と関係を維持する柔軟な外交戦略

という2つの柱が成長を支えていると分析している。

さらに近年の経済成長率は年7〜10%に迫る水準で推移しており、かつて韓国や台湾、シンガポールなどが急成長を遂げた時代に匹敵すると指摘した。

制度改革と成長モデル転換が鍵

ホーチミン市国家大学経済法科大学政策開発研究所のドー・フー・チャン・ティン所長は、ベトナムがアジアの虎へ成長する上で重要なのは「制度の質」と「成長モデルの転換」だと述べる。

近年は行政機構のスリム化や行政区画の再編が進められており、短期的な成長だけでなく、長期的な発展基盤の構築を目指す動きが加速している。

また、2024年末以降には、

  • 科学技術
  • 国際統合
  • 法制度改革
  • 民間経済発展
  • エネルギー
  • 教育
  • 医療

などに関する重要決議が相次いで採択された。

こうした政策は、従来の管理重視型から発展支援型への転換を示すものであり、ベトナムが中所得国の罠を突破するための基盤整備と位置付けられている。

半導体・AI分野への大型投資が進展

ベトナムは現在、単なる組立工場からの脱却を目指し、半導体やAI、バイオテクノロジー、再生可能エネルギー、デジタル経済といった先端分野への投資を強化している。

その象徴が半導体産業である。

日本の日経アジアは5月13日付の記事で、アメリカの半導体大手クアルコム(Qualcomm)がベトナムで研究開発活動を拡大し、グローバル技術拠点戦略の重要な一角と位置付けていると報じた。

また、オーストラリアのThe Interpreterも、ベトナムが世界的な半導体拠点を目指していると分析している。

ベトナム企業も半導体産業に本格参入

外資企業だけでなく、国内企業も大型投資を進めている。

今年に入り、ベトナムの軍系通信大手ベッテル(Viettel)とIT大手FPTが相次いで半導体関連プロジェクトを始動した。

ベッテルはハノイ市ホアラックで半導体製造工場の建設を開始し、FPTはバクニン省でチップのパッケージング・テスト工場を稼働させた。

これにより、ベトナム企業による初の本格的な半導体生産エコシステム構築への期待が高まっている。

さらに、アメリカ地質調査所(USGS)のデータによれば、ベトナムのレアアース埋蔵量は約2,200万トンと推定され、中国に次ぐ世界第2位の規模を持つ。

半導体や電気自動車に不可欠なレアアース資源を保有することも、将来的な競争力の強化材料とみられている。

「世界の工場」から技術拠点へ

ホーチミン市経済財政大学の経済専門家チャン・アイン・トゥン氏は、ベトナムが既に単純加工産業の枠を超え、電子機器やハイテク産業の戦略的拠点へ変化しつつあると指摘する。

現在では、

  • Samsung
  • Apple
  • LG
  • Foxconn
  • Amkor
  • Nvidia
  • Intel

などの大手企業が生産・研究開発拠点を拡大している。

サムスンは、ベトナムから年間500〜600億USD相当を輸出しており、国全体の輸出額の約15%を占める規模となっている。

また、AppleもAirPods、iPad、MacBookなどの生産移管を進めている。

課題は技術力と付加価値向上

一方で、専門家は課題も指摘する。

ベトナムの電子機器輸出は急拡大しているものの、中核部品やチップ技術、知的財産の多くは依然として外国企業が握っている。

つまり、生産規模は大きくなっているが、技術力や高付加価値分野での競争力はまだ十分とは言えない状況である。

今後は、

  • 半導体人材の育成
  • AI分野への投資
  • 裾野産業の育成
  • 研究開発能力の強化
  • 制度改革の継続

などが重要課題になるとみられている。

ベトナムは「次のアジアの虎」になれるのか

海外メディアや専門家の評価を総合すると、ベトナムは既に「安価な労働力の供給国」というイメージを脱しつつある。

大規模インフラ投資、半導体産業育成、デジタル経済拡大、制度改革などが同時進行している点は、過去のアジアの虎と共通する特徴でもある。

もっとも、技術自立や高付加価値化、人材育成といった課題は依然として残る。今後10年程度でこれらの課題を克服できるかどうかが、ベトナムが真の地域経済大国へ飛躍できるかを左右することになりそうだ。

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