ベトナムでは2026年末に向け、空港、都市鉄道、橋梁、大規模都市開発などの大型プロジェクトが相次いで進展している。政府が掲げる年間GDP成長率10%超の目標達成に向け、インフラ投資を通じて建設需要や雇用、関連産業の活動を押し上げる狙いがある。ビングループ(Vingroup)、サングループ(Sun Group)、THACOなどの民間大手も主要プロジェクトに参画し、インフラ整備を担う役割を拡大している。
一方、投資計画の規模が大きいだけでは、経済成長への寄与は保証されない。年末までの限られた期間に工事を進め、国内の生産やサービスの付加価値につなげられるかが焦点となる。
大型プロジェクトが全国で進展、民間企業の存在感高まる
ホーチミン市では10月16日、サイゴン川を渡る歩道橋の鋼製アーチ構造と支持フレームが、総重量約3,400トンの状態で専用台船に積み込まれた。橋梁部材はドンスエン港から水路で約124キロメートル移動し、バクダン埠頭方面へ運ばれる。10月21日の橋梁連結に向け、工事は最終段階に入っている。
総投資額は約1兆VND。ホーチミン市中心部とトゥーティエム新都市を結ぶこの橋梁は、国内企業ヌティフードの支援と、ダイズン・グループの高度な機械製造技術を組み合わせて進められている。年末の供用開始を目指しており、完成すればサイゴン川の両岸を結ぶ観光・文化空間としての役割も期待される。
フーコック島では、2027年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に向け、サングループが空港や会議施設などの整備を急いでいる。投資額約22兆VNDのフーコック国際空港拡張事業では、延べ床面積約38万7,000平方メートルの第2旅客ターミナルについて、着工から6~7カ月で躯体工事が進展した。コンクリート打設量は1日当たり3,000立方メートルに達するという。
このほか、投資額約21兆8,600億VNDのAPEC会議・展示センター、4,000席の多目的公演施設、APEC大通り、投資額約9兆VNDの軽量軌道交通(LRT)、約2兆4,000億VNDの航空機内食工場などが並行して進む。現場では1万2,000人を超える技術者や作業員が、機械設備を活用しながら24時間体制で工事に当たっている。
都市鉄道や医療施設にも大型投資
ビングループ傘下の企業も、都市開発や交通インフラへの投資を拡大している。ホーチミン市ホクモンでは、面積1,080ヘクタール、総投資額約59兆ドンの大規模都市開発「ビンホームサイゴンパーク(Vinhomes Sai Gon Park)」などが進められている。
10月15日には、ハノイ都市鉄道管理委員会と、ビンホームズおよびSGC投資建設による共同企業体が、都市鉄道5路線(1、2、8、10、14号線)の整備契約を締結した。契約は一括請負方式で、総投資額は約900兆VNDに上るとされる。ハノイの都市鉄道網拡充に向けた大型案件であり、民間企業が都市交通インフラの整備に深く関与する動きを示している。
また、ビングループは9月末、ホーチミン市カンゾーの大規模都市開発「ビンホームズグリーンパラダイス(Vinhomes Green Paradise)」内で、ビンメック(Vinmec)国際総合病院の建設に着手した。米国の医療機関Cleveland Clinicとの戦略的連携を掲げ、専門医療やリハビリテーション、滞在型サービスを組み合わせた医療観光拠点を目指す。敷地面積は7.4ヘクタール、病床数は500床で、年間約50万人の外来患者への対応を計画している。開業は2027年12月の予定である。
ロンタン空港と南部の鉄道整備も進む
南部のロンタン国際空港では、ベトナム空港総公社(ACV)の調整のもと、Vinaconex、CC1、デオカーなどの建設企業が工事を進めている。蓮の花をイメージした旅客ターミナルや滑走路、接続道路などの整備が進み、12月までの全体完成を目指す。供用開始後は、南部重点経済地域の航空輸送や商取引の拡大を支えることが期待される。
THACO傘下のダイクアンミン不動産投資会社は、トゥーティエムとロンタン国際空港を結ぶ都市鉄道計画を進めている。12月の着工を予定する同計画は、官民連携(PPP)方式で、初期の総投資額は約175兆7,140億VND。全長48キロメートルで、ホーチミン市―ロンタン―ザウザイ高速道路に沿って走り、トゥーティエム中央駅からロンタン空港へ接続する構想である。4月に着工したベンタイン―トゥーティエム線の延伸区間に当たる。
ホーチミン市は2026年第4四半期にも、トゥーティエム4橋、カンゾー橋、フーミー2橋、カットライ―フーヒュー港湾連絡道路、ゴーコン交差点、南北幹線道路の改良など、9件の重点インフラ事業の着工を予定している。
各地の大型事業は、交通渋滞の緩和や都市開発を促すだけでなく、建設資材、機械、物流、設計、金融など幅広い分野に需要を生み出す。年末に向けた工事の進捗が、地域経済と全国の成長を左右する要素となっている。
年間成長率10%超には第4四半期12.5%が必要
ホーチミン市経済金融大学の経済専門家、チャン・アイン・トゥン氏によると、2026年1~9月のベトナムGDP成長率は9.01%、第3四半期は9.95%だった。年間成長率10%以上を実現するには、第4四半期に約12.5%の成長が必要となる。これは第3四半期を約2.55ポイント上回り、2025年第4四半期と比べても約4.1ポイント高い水準である。
同氏は、課題として3つの圧力を挙げる。
第一は時間である。数兆VND規模の投資計画があっても、資金が実際の建設生産、工業製品、サービスの提供に転換され、GDPに反映されるまでには時間がかかる。残された期間は3カ月に満たず、施工業者の受注・施工能力、資材供給、工事の検収などが進捗を左右する。
第二は生産能力である。第3四半期には工業・建設部門が12.5%成長し、経済全体の付加価値成長への寄与は約51.6%に達した。第4四半期も高成長を維持するには同部門の役割が大きいが、輸出産業は海外受注、投入コスト、地政学的情勢の影響を受ける。
第三はマクロ経済の均衡である。1~9月の消費者物価指数(CPI)は前年同期比で平均4.52%上昇し、社会全体の投資額は15.1%増加した。投資、信用供与、消費を同時に拡大させても、供給が追いつかなければ、資材費、人件費、輸送費、資金調達コストの上昇を招く可能性がある。
同氏は、GDP成長率は公表された投資額や売上高、着工したプロジェクトの総額ではなく、実際に生み出された付加価値に基づいて計算される点を強調する。
大型投資の効果は建設段階から波及
大型プロジェクトの経済効果は、施設が完成してから初めて発生するわけではない。建設段階から資材調達、製造、輸送、雇用、金融サービスなどの需要を生み出し、経済活動を押し上げる。
同氏は、インフラ投資による波及効果について、中期的には投資額1VNDに対して1.5~2.5VNDのGDP効果が生じるとの一般的な見方を紹介した。また、第4四半期に追加で30兆VND規模の建設工事が行われる場合、国内で直接生み出される付加価値の割合を30%と仮定すれば、直接的な付加価値は約9兆VNDになると試算している。
ホーチミン市が公表した報告によると、重点プロジェクトを担う15社・共同企業体の2026年の計画投資額は合計143兆VND超に上る。ただし、8月末までの実施額は約58兆VNDで、進捗率は約40%にとどまっており、サングループの事業では約11兆9,000億VND、ビンスピードのベンタイン―カンゾー鉄道計画では約7兆2,000億VNDが実施された。
トゥン氏は、年末に向けてなお相当規模の投資が実行される余地があり、インフラ事業が第4四半期の成長を押し上げることに期待を示した。
また、従来は政府主導の公共投資が中心だったのに対し、現在は国が方向性を示しながら民間大手が事業を担う方式へと変化していると指摘する。工事の進行に伴って資金が経済に流れ込むだけでなく、2027年以降には新たなインフラの運営開始による効果も段階的に表れるとみている。
公共投資の執行加速と民間投資の誘発が課題
ホーチミン市国家大学の政策開発・リーダーシップ能力研究所で所長代行を務めるドー・フー・チャン・ティン准教授は、2026年第4四半期も社会全体の投資が経済成長の重要な原動力になると分析する。公共投資がインフラ基盤を整え、民間投資と外国直接投資(FDI)が生産能力や雇用を拡大し、経済の付加価値を高めるという役割分担である。
公共投資の民間部門への波及効果は、主に3つの経路を通じて生じる。
第一に、建設需要を直接生み出す。道路、橋梁、都市鉄道、都市インフラの工事が進めば、建材、機械設備、輸送、設計、コンサルティング、人材への需要が増える。関連企業は受注や雇用を確保しやすくなる。
第二に、民間投資を誘発する。新しい道路や橋、都市鉄道は交通手段であるだけでなく、企業活動の新たな立地条件をつくる。物流コストの低下や市場へのアクセス改善によって、工場、商業施設、倉庫、物流拠点、各種サービスへの投資が促される可能性がある。
第三に、長期的な発展への期待を形成する。戦略的なインフラ整備が計画どおりに進めば、企業は将来の事業環境を見通しやすくなり、生産能力の拡張や新規投資を計画しやすくなる。
チャン・ティン准教授は、年間成長率10%超という目標に向け、公共投資の執行加速を単なる予算上の課題として扱うべきではないと述べる。総需要を押し上げ、民間投資を呼び込み、経済成長の追加的な原動力をつくるための重要施策と位置付ける必要がある。
具体策としては、まず用地取得、投資手続き、入札、建設資材の供給、関係機関の連携など、プロジェクトの実行を妨げる問題を解消することが求められる。各機関の責任、権限、処理期限を明確にし、形式的な執行督促にとどまらない対応が必要だ。
次に、完成や供用開始が近く、経済波及効果の大きい事業へ優先的に資源を配分する。第4四半期は、実際の施工量を増やし、工事の検収や支払いを着実に進めることが重要となる。年内に完成できる施設は可能な限り早く供用を開始し、投資効果を実現すべきだという。
さらに、公共投資を呼び水として民間投資やFDI、官民連携事業の実施を促すとともに、資金の執行速度だけでなく、投資効果の向上にも目を向ける必要がある。予算を使い切ること自体を目的とすれば、品質や運営面で問題を残す恐れがあるためだ。
チャン・ティン准教授は、公共投資について、迅速な執行に加え、工事を期限内に完成させ、早期に供用し、民間資金の流入につなげることが重要だと強調する。公共投資がインフラを整え、民間投資が生産と雇用を生み出すことで、両者の相乗効果が持続的な成長の基盤になるとしている。
2026年末の大型プロジェクトの進捗は、短期的な成長率目標の達成だけでなく、2027年以降にベトナム経済がインフラを活用してどれだけ生産性を高められるかを占う試金石となりそうだ。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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