ベトナム経済が成長を続ける一方、事業を一時停止したり、解散手続きを進めたりする企業も増えている。ホーチミン市では2026年の年初から7カ月間に市場から退出した企業が約3万9,000社に達し、新設企業の約3万4,000社を上回った。
一見すると景気の悪化を示すようにも見えるが、全国規模では新設・再開企業の数が退出企業を上回っている。専門家は、こうした動きについて、ベトナム経済が縮小しているというよりも、企業の規模や生産性をめぐる構造的な再編が進んでいる可能性があると指摘している。
ホーチミン市では退出企業が新設企業を上回る
ホーチミン市では、2026年の年初から7カ月間に約3万9,000社が市場から退出した。これには事業を一時停止した企業や、解散を完了した企業などが含まれる。
一方、新たに設立された企業は3万4,000社を超えており、退出企業のほうが多い。
この状況を受け、ホーチミン市当局は企業が市場から退出する背景について分析を求めている。
しかし、同じ7カ月間にホーチミン市の財政収入は前年同期比20%以上増加し、5,754兆6,300億VNDに達した。また、外国直接投資(FDI)の誘致額も98億USDを超え、前年同期比44%以上増加している。
企業の退出が増えている一方で、税収や投資は大きく伸びているのである。
全国では「参入」が「退出」を上回る
全国の統計を見ると、状況はさらに違った姿を見せる。
統計当局によると、年初から7カ月間に新設または事業を再開した企業は約18万7,200社で、前年同期比7.5%増加した。
これに対し、市場から退出した企業は約15万5,300社で、7.6%増となった。
単純に差し引くと、参入企業は退出企業を約3万1,900社上回っている。
つまり、ベトナム経済では企業数が一方向に減少しているわけではない。新しい企業が市場に参入する一方で、既存企業の一部が退出するという二つの流れが同時に進んでいる。
このため、企業の退出数だけを見て経済全体が縮小していると判断することはできない。
GDP成長と企業退出は必ずしも矛盾しない
経済専門家によれば、GDPが成長しているにもかかわらず企業の退出が増えること自体は、必ずしも矛盾ではない。
GDPは経済全体で生み出された付加価値を示す指標である。一方、個々の企業の業績は、業種、規模、生産性、資金調達力、競争力などによって大きく異なる。
大規模企業や生産性の高い企業、輸出企業、FDI企業などが成長すれば、企業全体の付加価値や税収を押し上げることができる。その一方で、小規模企業の一部が事業を縮小したり、市場から退出したりすることはあり得る。
今回の統計は、まさにそうした企業間の明暗を示している可能性がある。
新設企業は大型化、小規模企業には負担
注目されるのが、新設企業の資本金規模である。
新設企業の平均登録資本金は121億ドンで、前年同期比で約40%増加した。7月だけを見ると、新設企業数は約14%減少したにもかかわらず、平均登録資本金は117億VNDとなり、前年同月比64.4%増加した。
これは、企業の新規参入が「数」から「規模」へと変化している可能性を示す。
一方、小規模・零細企業や労働集約型企業は、原材料費、人件費、賃料、資金調達、法令順守などのコスト上昇にさらされやすい。
利益率が低い企業では、売上高や利益が一定期間落ち込むだけでも事業を一時停止したり、市場から退出したりする可能性がある。
「企業退出=倒産」ではない
ただし、企業の「退出」という数字をそのまま倒産企業の数と考えることには注意が必要である。
今回の統計には、
- 一時的に事業を停止している企業
- 事業を停止し、解散手続きを待っている企業
- 解散手続きを完了した企業
が含まれており、それぞれ意味が異なる。
ホーチミン市経済大学の研究機関の専門家であるボー・スアン・ビン氏は、大規模・高技術・高生産性の企業が参入する一方、小規模・低生産性の企業が退出しているのであれば、経済はより効率的な構造へ再編されている可能性があると指摘する。
一方で、実際に事業を行い、多くの雇用や税収を生み出していた企業が退出し、新たに参入する企業が大きな資本を持っていても雇用創出が少ないのであれば、成長の「質」や民間企業部門の健全性について検証する必要があるという。
問われるのは「企業数」より企業の質
専門家が重視しているのは、退出した企業の数そのものではなく、どのような企業が市場から退出しているのかという点である。
零細企業や資本規模が小さく、長期間実質的に活動していなかった企業が解散手続きを進めているのであれば、経営環境の透明化や効率化に伴う自然な淘汰とも考えられる。
しかし、現在も事業を行い、雇用を生み出している企業がコスト上昇に耐えられず退出しているのであれば、民間企業部門の弱体化を示す可能性がある。
経済専門家のグエン・トゥーン・ラン氏は、現在の状況について、単純な企業数の増減ではなく「経済の再構築」と見るべきだと指摘する。
新規参入企業の資本規模が大きくなる一方、労働集約型の小規模企業が市場から退出しているためである。
大企業を育て、中小企業につなげる政策を
専門家は今後の政策について、苦境に陥った小規模企業を救済するだけでは不十分だと指摘している。
重要なのは、資本を蓄積し、設備投資や技術革新を進め、国際競争力を持つ企業を育てる環境を整備することである。
そのためには、金融、土地、税制、科学技術、人材育成などの政策を、企業の長期的な投資や規模拡大を促す方向へ設計する必要がある。
さらに、大企業が国内の中小企業を引き込み、原材料、物流、裾野産業、サービス、技術などの企業がサプライチェーンに参加できる仕組みを構築することも求められる。
企業の淘汰が単なる「企業数の入れ替え」に終わらず、ベトナム企業全体の生産性と競争力を高める再編につながるかどうかが、今後の焦点となりそうだ。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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