ベトナムでは、飼料価格の上昇などで畜産農家の生産コストが膨らむ一方、卵や豚肉の小売価格は十分に下がらず、生産者と消費者の双方に負担が生じている。生産現場では飼育規模の縮小や鶏舎の閉鎖を余儀なくされる事例も出ている。背景には、農場から小売店まで複数の業者が介在する流通構造や、輸送費、販売手数料などのコストがある。生産者の経営を守りながら消費者価格を抑えるため、流通の効率化が課題となっている。
飼料価格の上昇で畜産農家の負担が拡大
ホーチミン市スエンモックで養豚を手がけるチャンリン社は、母豚約3,600頭、肉豚約4万6,000頭を飼育している。同社の飼料購入費は月約300億VNDに達する。10月初めには飼料価格が1kg当たり400VND引き上げられただけで、月間コストが約10億VND増加した。
同社は飼料消費量と飼育密度を抑えるため、肉豚の飼育比率を引き下げ、離乳した子豚の一部も出荷する方針を取っている。同社のファム・チューン・ザン社長によると、飼料価格が上がっても生体豚の販売価格が同じように上昇するとは限らない。このため、飼育頭数を見直し、利益をある程度犠牲にしてでも、飼料高によるリスクと資金繰りの負担を抑える必要があるという。
採卵養鶏農家の状況はさらに厳しい。卵1個当たりの生産コストは2,100~2,200VNDに上る一方、販売価格は2,000VNDを下回り、1個当たり約200VNDの赤字が生じている。高値で売れる大玉の卵は全体の一部にとどまり、経営全体を支えるには不十分だ。
経営体力の乏しい小規模農場では、飼育羽数を減らして銀行への返済資金を確保しようとする動きがある。設備投資の減価償却を終えた農場の中には、損失拡大を防ぐため、鶏舎を閉鎖するところも出ている。
農場価格と店頭価格に大きな隔たり
ドンナイ市スアンロック地区で20万羽以上の採卵鶏を飼育するグエン・バン・ニャン氏は、農場での卵の販売価格は、スーパーや商業施設での販売価格の半分程度にすぎないと指摘する。生産者が赤字に苦しむ一方で、流通段階では利益が確保され、消費者は高い価格で購入しているとして、価格構造の不合理さを訴えた。
同じくドンナイ市スアンラップ地区で約3万羽を飼育する養鶏農家のブオン・ズン氏も、価格差の大きさを問題視する。豪雨や台風の影響で市場の卵価格が1個当たり約4,000VNDまで上がった時期でも、農場での販売価格は約2,800VND、大玉でも約3,000VNDにとどまったという。
メコン企業クラブのラム・トゥイ・アイ会長は、採卵養鶏にかかる費用を幅広く計算した結果、現在の買い取り価格では赤字になると説明する。生産者が経営を維持できないほどの価格水準であるにもかかわらず、消費者向けの販売価格は需要を喚起できるほど下がっていないという。
同会長によると、農場から小売店までには、検疫、人件費、電気・水道、包装、ラベル、輸送、流通網の運営など、さまざまな費用が発生する。例えば、農場で1個1,800VNDの卵が、小売店の店頭では約2,800VNDになる。削減の余地が大きい費用として、販売手数料やリベートなどの取引条件を挙げた。
こうした価格差は、卵だけでなく豚肉や鶏肉にも見られる。全国の生体豚価格は平均で1kg当たり約4万9,500VNDまで下落している一方、ホーチミン市の卸売市場では、枝肉価格が1kg当たり約7万VNDで推移している。小売価格も、豚脂の1kg当たり約6万8,000VNDから、スペアリブの約16万3,000VNDまで幅がある。
鶏卵については、農場での平均価格が南部で1個約1,580VND、中部で約1,660VND、北部で約1,900VNDであるのに対し、小売価格は一般的に1個3,300~3,500VNDとなっている。
農業専門家で、熱帯農業企業クラブのグエン・バン・ムオイ会長は、この問題は一時的な現象ではなく、生産地から消費者に届くまでの流通段階や、各段階で発生する費用に根差した構造的な問題だと指摘する。
多段階の流通と輸送費が価格を押し上げる
ムオイ会長によると、農産物は生産者から仲買人、卸売市場、一次・二次卸売業者、場合によっては三次卸売業者を経て、市場やスーパーなどの小売店に届く。各段階には集荷や販売を担う役割があるものの、流通網が分散し、相互の連携も十分ではない。
その結果、流通段階が増えるほど販売価格が上昇する一方、生産者は安定した販路を確保できず、低価格での販売を迫られる場合がある。
輸送費も価格差を広げる要因だ。一部の国では物流費が商品価格の8~10%程度とされるのに対し、ベトナムでは16~20%を占めると推計されている。物流インフラの接続性が十分でないことに加え、BOT方式の道路料金所などで発生する通行料金も輸送コストを押し上げている。
ムオイ会長は、小売流通網における販売手数料やリベートの見直しを提案する。事業者によって適用される条件が異なる一方、どの水準が妥当なのかを明確に管理する仕組みが十分ではないためだ。
東部家禽協会のグエン・バン・ゴック副会長も、養鶏業界では仲買人や卸売業者が複数介在し、各段階で数百VNDずつ利益が上乗せされる一方、農家が損失を負担していると指摘する。同氏は、農場から小売段階までの価格差は20%程度が妥当との考えを示した。
価格差を縮めるためには、流通企業が農場と直接取引し、農場内で選別・包装まで行う仕組みが有効だという。中間段階を減らしてコストを抑え、生産者と消費者の双方に利益が及ぶ流通構造を目指すべきだとしている。
物流基盤の整備と直接取引が改善の鍵に
行政側でも、生産地から市場までの物流を効率化する方針が示されている。農業・環境省の決定第2152/QĐ-BNNMT号では、原材料・生産地域と連動した物流システムを整備し、生産、加工、市場を結び付ける方向性が掲げられている。
具体策として、集荷拠点、冷蔵施設、備蓄倉庫、輸送車両、商品ごとの特性に応じた保管サービスなどへの投資を進め、生産地での価格と小売価格の隔たりを縮小することを目指す。
豚肉や鶏卵については、畜産地域の近くに集荷・一次処理拠点を設けるほか、食肉処理、選別、包装、冷蔵保管、専用輸送の能力を高めることが求められる。また、協同組合、企業、仲買人などが、契約や品質基準、価格情報の透明性を備えた調達網に参加できるようにすることも重要だ。
商品をまとまった規模で集荷・保管・輸送できれば、流通コストや輸送中の損失を減らせる可能性がある。生産者にとっては販売先の選択肢が増え、消費者にとってはより納得できる価格で商品を購入できる環境につながる。
卵や豚肉の価格差を縮めるには、単に小売価格の引き下げを求めるだけでは十分ではない。生産者が継続して利益を確保できる取引条件を整えながら、流通段階の整理、手数料の透明化、物流インフラの改善を一体で進めることが重要となる。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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