ホーチミン市では2026年末に向け、地下鉄3路線の新規着工準備や既存路線の工事加速、大型インフラ施設の完成に向けた取り組みが進んでいる。新規着工を目指す地下鉄3路線の総延長は約90キロ、概算投資額は総額254兆VND超(約1.5兆円)に上る。市は大型公共投資を通じて交通網を強化するとともに、建設業や製造業、物流、雇用、消費など幅広い分野への経済波及効果を狙う。
地下鉄3路線、総延長約90キロの整備を計画
ホーチミン市都市鉄道管理委員会(MAUR)によると、市は年末に向けて3路線の実現可能性調査報告書の完成を急ぎ、同時着工に向けた準備を進める方針である。3路線の概算投資額は合計254兆VNDを超える。
1つ目は、旧ビンズン省の市街地とスオイティエンを結ぶ路線で、全長は約31キロ、投資額は約55兆VNDである。旧ビンズン省のビンズオン街区にあるA1ロータリーを起点に、フーロイ、トゥアンザオ、アンフー、ジーアンなどの工業・都市地域を経由し、ホーチミン市東部のロンビン街区にあるスオイティエン・バスターミナル駅に接続する計画だ。工業集積地とホーチミン市東部を結び、通勤や地域間移動の時間短縮を目指す。
2つ目は、トゥーザウモットとタオダンを結ぶ路線で、全長33.2キロ、投資額は約110兆VNDとなる見込みである。16の区を通過し、ビンズン・スオイティエン線のS5駅とベンタイン・タオダン地区を結ぶ。北部と南部を結ぶ経済回廊の交通混雑緩和が期待されている。
3つ目は、地下鉄6号線の第1期区間に当たるタンソンニャット空港―フーフー間である。投資額は約89兆VNDと見積もられている。タンソンニャット国際空港と東部のイノベーション都市圏、フーフーの内陸コンテナ港(ICD)を結び、さらにトゥーティエム―ロンタイン鉄道を通じてロンタイン国際空港方面への交通網との連携も目指す。
これらの路線は、ホーチミン市中心部と旧ビンズン省地域などを結ぶ広域交通網の形成を担う重要な事業であり、2030年までの完成を目標としている。
地下鉄2号線も工事を加速、2030年までの運行目指す
新規路線の準備と並行して、ベンタイン―タムルオン間を結ぶ地下鉄2号線も工事を加速している。総投資額は55兆VND超で、ホーチミン市の都市鉄道網を構成する中核事業の一つである。
MAURによると、現在は地下駅5カ所で並行して工事を進めている。さらに10月末にはタオダン、バイヒエン、グエンホンダオの3駅でも工事を開始する計画だ。残る駅についても交通規制や工事区域の確保に向けた調整を進め、12月の着工を目指す。
年末にかけて11駅の工事を並行して進めることは、今後の工程を左右する重要な段階となる。計画では、2027年10月にトンネル掘削機(TBM)を投入し、2029年3月に主要構造物を完成させ、同年末までに線路の敷設を終える。そのうえで、2030年までの営業運転開始を目指す。
ロンタイン空港とサイゴン川歩道橋も節目に
年末は、新規プロジェクトの着工だけでなく、大型インフラ施設の完成に向けた節目も迎える時期となる。
ロンタイン国際空港は、工事全体の進捗率が80%を超え、試験運用に向けた準備段階に入っている。ホーチミン市の主要交通網との接続を進めることで、空港を中心とした広域交通ネットワークの形成が期待される。
また、ベンタイン埠頭公園とトゥーティエムの川沿い公園を結ぶサイゴン川の歩道橋も、重要な工程である橋桁の接合を終えた。投資額は約1兆VNDで、ホーチミン市の歴史的中心部と、新たな金融センターとして開発が進むトゥーティエムを歩行者で結ぶ計画だ。
歩道橋は移動の利便性を高めるだけでなく、市民が利用できる公共空間としての役割も担う。観光客の回遊を促し、周辺の商業・サービス業への需要を生み出す効果も見込まれている。
年末の経済成長目標達成へ、公共投資が鍵に
ホーチミン市は2026年の域内総生産(GRDP)成長率10.02%を目標としている。これを達成するには、年末の四半期に13.23%を超える成長率が必要であり、目標の計算方法によっては13.5%超が求められるとの見方もある。
ホーチミン市資源・環境経済研究所のファム・ビエット・トゥアン所長は、目標達成に向けて公共投資を強力に推進する必要があると指摘する。多数の大型工事に人員や資材を集中的に投入すれば、建設現場だけでなく、関連産業や地域経済にも資金の流れが広がるためだ。
まず恩恵が及ぶと考えられるのが、建設資材や鉱業などの関連産業である。大型工事が本格化すれば、セメントや鋼材などの需要が増え、製造業や資源採掘企業の生産活動を下支えする。ダンプトラック、生コンクリート車、ショベルカー、クレーンなどの稼働増加は、機械・金属加工業に加え、燃料、物流、整備・修理サービスへの需要も押し上げる。
雇用面でも波及効果が期待される。建設現場では技術者や作業員だけでなく、運転手や警備員など幅広い職種で人手が必要となる。雇用と所得が増えれば、家計の購買力が高まり、消費の拡大につながる。
さらに、大規模工事の周辺では、飲食店、日用品販売、賃貸住宅、洗濯サービスなど、作業員の日常生活を支える事業への需要も増えるとみられる。現場周辺の地域経済にとって、工事に伴う日々の消費支出は直接的な追い風となる。
交通網の整備が民間投資や金融にも波及
インフラ整備の効果は、工事期間中の需要増加にとどまらない。新しい道路や交通結節点の整備が進めば、周辺地域へのアクセスが改善し、住宅、オフィス、倉庫などの開発を目的とした民間投資を呼び込む可能性がある。
公共投資の執行が活発になれば、建設事業者や資材供給企業向けの融資など、金融機関の信用供与にも影響が及ぶ。住宅購入者向け融資なども含め、関連する金融サービスの需要拡大が見込まれる。
ホーチミン市が年末に向けて進める大型インフラ事業は、交通混雑の緩和や都市機能の強化に加え、短期的な経済成長を支える政策手段でもある。ただし、投資計画の発表や工事の進捗が、そのまま成長率の上昇につながるわけではない。実際の効果は、予算執行の速度、工事の進捗、関連産業への発注、そして生み出された雇用や所得がどこまで消費・投資に結びつくかに左右される。
大型プロジェクトを着実に進め、交通網の改善と幅広い産業への波及効果を実現できるかが、ホーチミン市の年末の成長目標達成に向けた焦点となる。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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