―― ベトナムでも、コロナ禍で在宅勤務が一気に加速しましたね。今はオフィスに通えていますが、これからは在宅勤務を想定する必要があります。
鷹野 在宅勤務で困る問題の一つに印鑑がありますね。ベトナムのビジネスでは、日本同様に印鑑を使う文化が定着していますからね。
―― そうですね。契約書や行政関連の書類など、全部印鑑を押してますね。在宅勤務中も、印鑑押すためだけに会社に行ったり。
鷹野 その文化が変わるかもしれません。企業法が改正され、2021年1月1日に施行されます。これまで会社は印鑑(社印)を当局に登録しなければならないとされていました。新企業法では、会社は印鑑とするか電子署名とするかを選ぶことができ、当局への登録も不要となりました。つまり、社印を持つことは、会社の義務ではなくなったんです。
―― 手続きが簡単になり、良いニュースですね。
鷹野 ただ、電子署名が一気に定着するとまでは言い切れないと思っています。契約書への押印も、法律で義務はありませんが、ほとんどの会社が印鑑を押している実情がありますね。
―― 確かに、相手の会社が印鑑を押していたら、私たちも押さなきゃという同調圧力が働きそうですね。
鷹野 会社の印鑑があると契約書の証拠価値がより上がる、という考え方が背景にあるようです。もっとも、印鑑の文化がない国の会社との取引では、印鑑を押さないことが普通ですからね。今後、国内間の取引や行政手続きでも、脱印鑑が進むか注目です。