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ベトナムビジネス情報Vol.148
製造業の大展示会が3年ぶりの開催!
MTA VIETNAM 2022

ベトナム最大級の工作機械、精密機械、金属加工の総合展示会「MTA VIETNAM 2022」が、3年ぶりにリアルで開催された。期間は7月6~9日、場所はホーチミン市7区のSECC。12の国と地域から250社以上が集まった。

見て回るワクワク感が復活

 MTA VIETNAMが戻ってきた! 前回のリアルでの展示会が2019年のこと。2020年は延期の末に中止となり、2021年はオンラインでの開催だった。第18回目となるMTA VIETNAM 2022は、8000㎡の展示エリアで250以上のブースが出展した。

 出展はベトナム企業より外資系企業が多く、国際パビリオンは7グループ。最も目立っていたのはフロア中央に大きくスペースを取った韓国パビリオンで、SECCの入口から会場までは前回のようにドイツパビリオンが埋め尽くした。

 訪れたのは開催2日目で平日の午前中だったが、会場内は人であふれていた。話を聞くと初日のほうが多かったようで、最終日の土曜日はもっと増えたはずだ。

 展示フロアはA1を使い、その奥のA2ではプラスチックやゴムに関連した展示会「Plastics & Rubber Vietnam 2022」が同時開催。ドイツ、イタリア、オーストリア、シンガポールなど外国企業も出展していたが、商品やマシンの展示は少なく、デスクのみの小ブースでの出展も。何より出展社数が少なかったのが残念だった。

 MTA VIETNAM 2022で何社かの日系企業に話を聞いた。

大手工作機械メーカーの出展

 MTA VIETNAMへの出展が12回目となる常連企業のAMADA VIETNAM。好立地の広いスペースでハードとソフトを展示した。これからは工場の生産管理が重視されると、IoTを活用した生産の見える化などで工場運営を効率化する「V-factory」をアピール。日本では浸透しつつあるがベトナムはこれからが普及期と新しいニーズを狙う。

 ブース内を占めるのが、金型の段取りを自動化した大型マシンの「HRB-1003ATC」。ベトナムでは初めての展示となった。品質や生産性を向上させるこうしたマシンと共にV-factoryなどのソフトウェアをパッケージで提案している。

「ある程度の企業規模がある会社さんが対象ですが、ベトナムではこのトップ層が伸びており、それに従ってボトム層も膨らんでいます。市場として有望ですね」

 今回が10回目の出展となるのがMAKINO VIETNAM(牧野フライス製作所)。売れ筋商品のマシニングセンタである部品加工の「PS105」と金型加工の「F5」を展示。どちらも興味深げにベトナム人が注視していて、初日だけで日本人とベトナム人を合わせて約30の商談が生まれたという。

 これら製品は日本とシンガポールの工場で生産しており、今回の展示品はシンガポール製。今後は地理的に近いシンガポールからの販売に注力する。他国と比べてベトナムでの売行きは良く、年間目標を達成できそうだという。

「精度の高さと細かい検査を重ねていることが、私たちの製品の特徴です」

来場者を引き寄せる展示内容

 YAMAZAKI MAZAK VIETNAMはコモディティモデルの旋盤「QTE-200 SG」とマシニングセンタ「VCN-430AL」を出展。会場側面の入口から近いためか立ち寄る人が多く、来場は活況とのこと。マシンは中国製とシンガポール製で、覗き込むように眺めているベトナム人が多かった。

 TAKAMATSU MACHINERY VIETNAMは3回目の出展。主に自動車やバイクの部品を加工するNC旋盤の「GSLシリーズ」の大小2機種を展示。スペックを少し落として購入しやすくしたタイプを販売したいのことで、興味を持ってくれる来場者が多いそうだ。

 LMガイドで知られるTHKは広いブースを使い、LMガイド、アクチュエーター、ボールねじ、ローラーリングなどを新製品も含めて多数展示。電動アクチュエーターは動きのあるデモを見せており、見学する人が多かった。技術者でなければあまり見る機会はないだろうと、購買担当者を意識したアピールで、新規の顧客獲得も目指している。

 来場者は多く、商談も増えているとのこと。世界的な半導体不足や昨今の世界情勢から、トラブルを抱える人もいるという。

「メカトロニクス部品の納期が延びており、リードタイムを上げたいなどのご相談を受けることも多いですね」

今後の進出企業も見据えて

 前回に続いて2回目となる黒田精工は、現地代理店のKanematsu KGK VIETNAMと共に出展。精密成形平面研削盤「GS-45」を前面に展示していた。

 初日で約100人が来場して、10件ほどの商談ができた。来場者はベトナム人がほとんどで、話を聞くと北部から来た人も珍しくなかったそうだ。

「製造業系の展示会自体が久しぶりですから、待ちかねていたのだと思います」

 精密成形平面研削盤は日本から輸入しており、昨年は新品をかなりの台数販売できた。良い売れ行きと感じており、これから進出が見込まれるiPhone関連のサプライヤー、特に精密加工メーカーにも認知を広げたいと語る。

 精密工具メーカーの日進工具はベトナムを含めた各国で代理店販売を展開。ブースは代理店企業が出展しており、ブース内ではほかのメーカーも展示していた。

 金型用の精密なエンドミルが主力商品で、金型メーカーが主要顧客。ベトナムでは汎用工具が売れていて、高精度の分野にはまだ入り込めていないという。

「製品を見て『すごい』とは言ってくれますが、取扱いと管理が難しそうだという話も聞きます」

 精密かつ微細な仕事は限定されているようだが、その分だけ伸びしろがあると積極的だった。

工作機械向けの特殊製品

 会場に入ったすぐ横で出展していたのが、精密位置決めセンサーのメトロール。工作機械用のセンサーで、機内計測など精度が要求される製品向けだ。ベトナムでは代理店販売で、顧客は自動車や医療機器などの日系メーカーが多い。

 ベトナムで初めて展示する製品を並べたこともあってか、来場者の反応は良く、前回に比べて自動化を考えている人が増えていると感じた。「センサーを付けたらどうか」といった提案をしており、検討しているという声も聞いている。

「MTA VIETNAMは5回目です。2019年よりも来場者が減るだろうと心配していたのですが、同じくらいの人数で安心しました」

 マシニングセンタなどの工作機械に装着して使う、工具保持具の専門メーカーであるMSTコーポレーション。多種多様な製品を展示しており、作業やマシンに合わせて種類とサイズが豊富なことも特徴という。

 時折始める説明会には多くのベトナム人が集まり、その集客力もあってか商談数が増えているそうだ。ベトナムの売上はアジアの中で悪くなく、自動車や電気電子系の金属加工会社が主要顧客だ。

「ベトナム企業で競合は見当たりませんが、日本や欧米にはあります。安心はできません」

日本の精密加工技術は健在

 金型部品メーカーのPUNCH INDUSTRY VIETNAMは多種多様な金型用部品を展示。日本と中国から輸入しており、オーダーメイドの特注品が好評という。ベトナムではローカルの金型メーカーが育ちつつあり、同社のようなハイレベルの部品を探している来場者も多そうだ。

「ローカル企業に比べると価格は高いかもしれませんが、だからと言って品質は落とせません。自社工場での精密加工に競争力があります」

 エンドミルやドリルなどの切削工具を生産するSEGAWA TOOL VIETNAMは小ブースでの出展。日系企業だがベトナムの工場に日本人はおらず、ベトナム人スタッフだけが説明していた。日本風の浴衣を着たり、イラストのポップを作るなど、展示方法に工夫をしていた。

「お客さんは多いですね。出展してよかったと思います」

広がれ!製造業の展示会

 いつもの賑わいが戻ったようだった。22の国と地域から約500社が出展した前回よりは規模は劣り、多かった中国系、台湾系、シンガポール系などの外資系企業も減っていたが、会場を闊歩する人たちからは楽しげな様子が伝わってきた。外国人来場者は少なかったが、回を重ねるごとに増えていくのはまず間違いない。

 新型コロナ以降での本格的な製造業向けの展示会は、MTA VIETNAMが始めてではないか。新型コロナ禍では苦肉の策のようにオンライン展示会が開催され、ACCESSでもいつくかを紹介してきた。しかし、製造業の製品は生で見て触らないとその良し悪しがわからないと、改めて感じた。

 製造業のリアルな展示会がこれから広がり、出展企業と来場者が増えていくことを願う。