国内最大級のパッケージ業界の展示会「PROPAK VIETNAM 2026」が3月31日~4月2日、ホーチミン市7区のSECCで開催された。「包装」をキーワードに関連する業種が集まる大型展示会が、今年もやってきた。
イタリアパビリオンが存在感
今回のPROPAK VIETNAMで目立っていた海外ブースは、15社を集めたイタリアパビリオン、続いて数年前から出展が続くドイツパビリオン。どちらも揃いのデザインや色遣いがお洒落で、他とはちょっと違う。
アジア系はライトブルーの看板を掲げた台湾系、小規模ながら数で勝負の中国系、少々勢いに欠いた韓国系……日本は残念ながらパビリオンはなかった。
その代わりではないが、食品機械などを製造するキョウワベトナムが、代理店となっている日本のメーカーを招いて共同で出展していた。ここで5社から話を聞いた。


水流とバブルで食品を洗浄
その1社であるタイガーカワシマは業務用食品洗浄機を展示。色鮮やかな野菜が水槽の中で踊るような姿に、来場者が何事かと目を向ける。ジェット気流による水の循環で食品を洗浄し、浮遊するゴミはネットで、沈殿する汚れはスノコ下で分離する構造を持つ。
「日本国内の実績は比較的順調なのですが、海外展開を加速させたいと出展しました」
納入先は食品の一次加工工場などで、野菜だけでなく海産物や肉の洗浄にも対応できる。ベトナムで代理店による販売とアフターサービスとなるが、当初は衛生意識の高い輸出型企業などを顧客と想定している。そこからローカル企業へと浸透させたい。
「商談はこれからですね。名刺を交換してからアプローチです」

自動洗浄機の時代は来るか?
同じ洗浄でもパレットやコンテナの自動洗浄機を手掛けるのがクレオ。2月号で取材したベーカリーの展示会「VIBS 2025」では単独だったが今回は共同で出展した。
「包装全体が対象ですから、PROPAKの方がお客さんとしては幅広いです」
日本や欧米の厳しい衛生基準に合わせた洗浄機なので、以前は「ベトナム市場にはまだ早い」とも語っていたが、輸出拡大もあって手洗いから機械洗浄への移行が不可欠な段階に入ったと見る。
来場者からは「展示機をそのまま買って帰りたい」という声も聞いており、市場の確実な成長を実感。タイでの20年の実績を背景に、ベトナムも数年以内に動きのあるマーケットになると期待する。

ベトナムに合わせた充填機
自動定量充填機のメーカーである横浜自働機は、今回で3回目の出展となる。ベトナム市場のニーズに合わせて、小ぶりで電動式、価格を抑えた充填装置を展示した。その対象は食品だけでなく、ゼリー状の製品やボディソープ、クリームなど多岐にわたる。
「隣にある業務用オーブンも弊社の展示で、瓶に中身を充填したプリンを焼いています」
これまでは日系企業への納品が中心だったが、今後は現地企業への販路拡大を狙っている。来場者数は以前に比べやや落ち着いた印象だが、ハノイでのPROPAK VIETNAMにも興味があり、北部の市場開拓も視野に入れる。

食品業界を「半自動化」へ
キョウワベトナムと共同出展を続けるのは、自動包装機メーカーのフジキカイ。食品メーカーをターゲットとした横ピロー包装機を展示した。製品には高価格帯モデルも含まれ、主な顧客は外資系や大手ローカル企業だそうだ。
出展の大きな目的は、将来的な人件費上昇も見据えた半自動化ニーズの掘り起こし。初日は来場者が少なかったものの、2日目は客足が戻ったそうだ。
「ご相談をいただいて、すぐに商談にはならなくても、数年後に『やってみたい』などとご連絡をいただく場合もあります」

2次包装の自動化を提案
最後に紹介するのは初出展のオリオン機械工業。加工食品などを直にパッケージする1次包装ではなく、それらをまとめて輸送用や陳列用に包装する2次包装の自動化設備を手掛ける。
まとまった量の製品をダンボールや袋に詰める工程を自動化するため、ある程度の規模の工場設備となる。展示された菓子ブランドは、確かにフィルムや段ボールで複数個を包装している。
世界約35ヶ国に導入実績があり、メインはインドネシア、台湾、韓国、中国、フィリピン、中東など。ベトナムの本格的な市場開拓は今年から始めた。
「昨年末にキョウワさんとお話させていただいて、今回の出展が決まりました」
ベトナムでは特産のコーヒー、あるいは菓子やカップ麺などを大量生産する食品メーカーなどを顧客と想定している。
「弊社はフルオーダーで設計から入るため、日系やローカルの大手企業さんを考えています」

食品ロス削減と環境対応の両立
単独出展の企業にも話を聞いた。クラレは酸素バリア性に優れた樹脂「エバール」を中心に、賞味期限の延長や食品ロス削減に貢献できる高機能素材をアピールした。2018年から出展している常連企業であり、ベトナムでも既に納入実績がある。
「環境対応素材でもあり、お客様にはグローバルなブランドオーナーさん、欧州などへの輸出企業さんなどが多いです」
現在はシンガポール拠点をハブとしているが、2026年末には同地で新工場を稼働させ、ベトナムを含む東南アジアへの供給体制をさらに強化する計画という。アルミなどの代替素材としての提案も進めており、長期的な視点でベトナム市場の成長に期待を寄せている。

地場の食用油メーカーに採用
プラスチックキャップを専門に製造する三笠産業も常連組になりつつある。同社の強みは液体調味料等が「漏れない」、「開けやすい」という独自のキャップ構造にあり、近年ではベトナムの大手食用油メーカーであるトゥオンアン(Tuong An)で使用された。
「営業担当のベトナム人女性が以前からアプローチしていまして、提案が採用されました」
こうした現地で流通している製品を展示することで、来場者への信頼性を高めた。液漏れがある、開けにくい、閉めにくい、などの悩みにきめ細かな提案を行い、最近では同社のキャップに合わせてボトル口を設計するケースもあるという。
工場は日本とタイにあり、タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポール、イタリアなどへも販路を広げている。

蒸着とマット塗装の高級感
プラスチック製品を製造するマサキ工業はベトナム初出展。特殊な塗装や印刷なども自社で行う高い技術力を持つ。
今回の主な目的は市場調査であり、ベトナムでのコスメ市場を意識して化粧品用のボトルを並べた。透明なプラスチックボトルに蒸着やマット塗装を施し、高級な質感を出したサンプルに来場者の眼が引き寄せられる。
「日本ではボトルなどの完成品を納入する他、印刷、ラベル貼り、外部工場への充填の委託など、企画から完成まで請け負えます」
同社ではベトナム人の技能実習生が働いており、帰国した彼らが日本の技術を活かせる受け皿を作りたいとも考えている。PROPAK VIETNAMはその第一歩でもあり、将来は現地工場と夢は膨らむ。

サステナブルへの環境包材
原材料メーカーである三井化学は、リサイクルを容易にするモノマテリアル(単一素材)化や環境保全に向けた原材料の環境包材を提案する。環境意識の高い欧州企業などには納入実績があるが、東南アジアの市場は未知数な部分が多いという。
「ごみの分別やそのための環境教育がまだ途上であり、これからの市場です」
ベトナムでの環境意識は高いが、その対価としてコストが上昇するとなれば二の足を踏む。法制度が整えば環境包材の利用も増えるだろうと見込む。
ブランドオーナーを上流とすれば、その下にフィルムメーカーやコンバーターと呼ばれる中間層があり、原材料を扱う同社は川下に当たるという。ただ、垂直統合の川下から環境意識を変えていくこともできる。

本当に興味がある人は参加する
化学系商社のソーダニッカ(SODA NIKKA VIETNAM)は、各種食品用の高バリア材料や包装フィルムのサンプルを展示した。同社の直接の顧客はフィルムを加工するコンバーターであり、そこから食品メーカーへと製品が渡る。
「数年を空けて久々に出展しました。日本やタイの展示会に比べると来場者は少ないですが、その分、本当に興味がある層が来てくれます」
ポテンシャルのある顧客はブースを訪れているという手応えを得ていた。最後は展示品と共に、はいポーズ!

以前のPROPAK VIETNAMと比べるとフロアスペースが少し狭くなり、巨大な自動包装機などの展示も少なくなったが、全体的にコンパクトで洗練された印象を持った。
報道によればイタリアは総領事館、貿易や包装の関係機関などが出展に協力しており、国を挙げてベトナムとの関係を強化しているようだ。インド、日本、中国など、ベトナムの展示会では時折、こうした主役を張るプレイヤーが登場する。来年の注目株はどこになる?

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取材・執筆:高橋正志(ACCESS編集長)
ベトナム在住11年。日本とベトナムで約25年の編集者とライターの経験を持つ。
専門はビジネス全般。