ベトナムのトー・ラム書記長兼国家主席は9月20日から米国を訪問し、第81回国連総会のハイレベル討論に出席する。滞在中には米国での二国間活動も予定されている。
今回の訪米にあたり、ベトナム外交当局は、国連をはじめとする多国間外交への関与をさらに深め、国際社会における役割を拡大していく姿勢を示している。
第81回国連総会、「信頼の回復」が主要テーマに
2026年9月に開幕した第81回国連総会では、「信頼の回復、変革への対応――すべての人に成果を届ける国連」をテーマに、国際社会が直面する課題について各国首脳らが議論する。
第81回国連総会は9月8日に正式に開幕し、ハイレベルの一般討論は9月22日から28日まで開催される予定である。
ベトナム側によると、トー・ラム書記長兼国家主席の演説では、世界情勢の大きな変化を平和、協力、発展につなげるため、国際社会における信頼の強化と共同の取り組みの重要性を訴える方針である。
ベトナムは「参加」から「提案・貢献」へ
ベトナム外務省のドー・フン・ベト国連大使は、近年のベトナム外交について、国際機関の活動に参加するだけでなく、国際的な枠組みや共通ルールの形成にも関与する段階に入っているとの認識を示している。
その例としてベトナム側が挙げるのが、サイバー犯罪対策に関する「ハノイ条約」の署名開放式典の開催、人権理事会への再選、国際海洋法裁判所(ITLOS)裁判官へのベトナム人専門家の初選出などである。
ベトナム外交当局によれば、ITLOS裁判官の選挙では、アジア・太平洋地域で最高得票となったとしている。
こうした活動は、ベトナムが国際機関において単に議論に参加するだけでなく、自国の外交課題や関心分野を国際的な議論の枠組みに反映させようとする動きとして見ることができる。
2026年はNPT再検討会議の議長国も担当
2026年には、ベトナムが核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議の議長を初めて務めることも、ベトナム外交当局が挙げる重要な活動の一つである。
また、ベトナムが主導した文化分野の取り組みとして、2027~2036年を「持続可能な開発のための文化の国際10年」とする国連決議の採択も紹介されている。
この決議には103カ国が共同提案国として加わったとベトナム側は説明している。
ベトナム政府は、文化を持続可能な開発における重要な要素として位置付け、国内政策上の優先事項を国連レベルの協力枠組みに発展させた事例としている。
国連以外の多国間外交でも活動を拡大
ベトナムの多国間外交は国連だけに限られない。
2025年1月から2027年末まで、ベトナムは国連女性機関(UN Women)の大きな方向性や活動計画の策定・実施に関する調整にも参加している。
また、2026年5月にはシンガポールで開催された第23回シャングリラ・ダイアローグで、トー・ラム書記長兼国家主席が基調講演を行った。
この演説では、国際秩序、開発モデル、戦略的信頼をめぐる三つの危機を取り上げ、変化する国際環境の中で平和、安定、発展を構築する必要性を訴えたとされる。
こうしたベトナムの外交姿勢について、海外の研究者からも評価する見解が示されている。国際基督教大学のスティーブン・ロバート・ナジー教授は、シャングリラ・ダイアローグでのトー・ラム国家主席の演説について、ASEANや発展途上国、戦略的自律性を維持しようとする中小国にとってベトナムの重要性を示すものとの見方を示している。
一方、こうした評価は研究者個人の見解であり、ベトナム外交の実際の影響力を測る際には、各国との外交関係や国際機関での具体的な成果などを個別に見る必要がある。
ASEANでも多国間協力を主導
ベトナムはASEANでも多国間協力に関する取り組みを進めている。
2026年6月にはハノイで「ASEAN Future Forum(AFF)2026」が開催された。同フォーラムは、2023年9月にインドネシアで開催されたASEAN首脳会議でベトナムが提案した構想を起点として、毎年開催されている。
2026年のテーマは「共通の未来をともに形作る――平和、繁栄、人を中心に」であり、ASEANが直面する課題について加盟国や関係者が議論した。
「国際社会で何を得るか」から「何を提案するか」へ
ベトナムの多国間外交をめぐって近年目立つのは、国際機関への参加そのものだけでなく、国際的な枠組みや議題を自ら提案する動きである。
ASEAN、APEC、WTOなどの多国間枠組みに参加してきたベトナムは、経済成長とともに外交面でも活動領域を広げてきた。
今回の国連総会への参加についても、ベトナム側は国際協力から利益を得るだけでなく、平和、協力、持続可能な発展に向けた取り組みに自ら貢献する姿勢を強調している。
第81回国連総会が「信頼の回復」を主要テーマとして掲げる中、ベトナムがどのようなメッセージを発信し、各国との協力につなげていくのかが注目される。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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