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ベトナムの家庭用太陽光発電、なぜ普及しない? 補助制度があっても進まない理由

ベトナムで民間家屋への設置が進まない太陽光発電パネル
(C)THANH NIEN

ベトナム政府は、家庭や公共施設への屋根置き型太陽光発電の導入を促している。しかし、制度面での規制緩和や補助策が進む一方、一般家庭による導入は依然として低調である。

背景には、地方自治体の制度運用が追いついていないことに加え、初期投資の大きさ、地域による日照条件の違い、蓄電池のコスト、余剰電力の売電制度など、実際に投資する側から見た複数の課題がある。

政府は家庭用太陽光発電の導入を加速

商工省は9月18日、省庁や地方自治体に対し、庁舎や学校、病院などへの屋根置き型太陽光発電の設置を加速するよう改めて要請した。

政府は、蓄電システム(BESS)と組み合わせた家庭用太陽光発電についても普及を促している。背景には、電力需要の増加に対応しながら再生可能エネルギーの利用を拡大する狙いがある。

しかし、政策が打ち出されたからといって、すぐに家庭への導入が進むわけではない。

現在、地方では「どのような手続きで補助を申請するのか」「どの設備が補助対象になるのか」といった具体的な運用が十分に周知されていないケースが存在する。

中部地方のある養殖農家は、太陽光発電と蓄電池の導入を検討して自治体に相談したものの、担当職員から「まだ研修を受けていないため対応できない」と説明されたとしている。

制度そのものが緩和されても、現場で手続きができなければ、住民にとっては「使える制度」にはならない。

北部では日照条件と投資負担が壁に

特に北部では、太陽光発電の導入に別の問題がある。

北部は中部や南部と比較して日射量が少なく、冬季には曇天の日も多い。そのため、同じ設備を導入しても発電量が少なくなりやすい。

一方で、太陽光パネルや蓄電池にはまとまった初期投資が必要となる。

専門家によると、リチウム蓄電池の価格は容量によって異なるものの、1kWp当たり約1,200万~1,500万VND、10~16kWh程度の大型蓄電システムでは3,000万~5,000万VND程度になるという。

北部で自家消費型のシステムを導入した場合、投資回収には4~6年程度、より高機能なハイブリッド型では5~7年程度かかるとの見方もある。

補助金が導入されても、その金額が投資額全体に占める割合が小さければ、家庭にとって導入を決断する十分な理由にはなりにくい。

補助制度は始まったものの地域差も

現在、家庭用太陽光発電に対する財政支援を試験的に導入している地方もある。

北部のバクニン省では、家庭が屋根置き型太陽光発電を設置する場合、1kWp当たり最大100万VND、1世帯当たり最大300万VNDを支援する制度がある。蓄電システムを設置する場合には、さらに最大300万VNDが支援される。

ライチャウ省では、太陽光発電設備と関連機器の導入に対して1世帯当たり最大5,000万VNDを支援する制度がある。ただし、主な対象は少数民族世帯、貧困・準貧困世帯、あるいは電力網が整備されていない地域の住民である。

ハノイ市も8月末、太陽光発電と蓄電池を導入する家庭に最大600万VNDを支援する案を示した。ただし、実施にはハノイ市人民評議会の承認が必要となる。

このように制度は動き始めているものの、全国一律の普及策にはなっておらず、地域によって支援内容や対象が大きく異なる。

「余った電気を売れる」が実際には使えない

家庭の投資判断を難しくしているもう一つの問題が、余剰電力の扱いである。

現在の制度では、家庭が発電した電力のうち余剰分を一定割合まで電力網に売却できる仕組みが認められている。しかし、実際の接続手続きや技術的なガイドラインなどには、なお不明確な部分が残っている。

再生可能エネルギーの専門家であるグエン・クオック・ベト氏は、余剰電力を最大50%まで売却できる制度がある一方で、現時点では実際に売電できている事例がほとんどないと指摘する。

制度上「売れる」とされていても、実際に売電できなければ、家庭はその収益を前提に投資回収期間を計算することができない。

買取価格の低さも投資意欲を抑える

さらに問題となるのが、余剰電力の買取価格である。

現在、投資家が余剰電力の売却によって受け取る価格は約1,100VND/kWhとされる。一方、家庭が電力会社から購入する電気料金との差は大きい。

この価格差では、昼間に発電した電力を売却して設備投資を回収するというビジネスモデルを描きにくい。

専門家は、単純に「太陽光発電を設置できるようにする」だけでは普及は進まず、投資した家庭が具体的な収益や投資回収期間を計算できる経済的な仕組みが必要だと指摘している。

蓄電池を組み合わせた新たな仕組みも

専門家からは、時間帯によって余剰電力の買取価格を変える仕組みを導入する案も出ている。

例えば、太陽光発電で昼間に作った電力を蓄電池に貯め、電力需要が高まる時間帯に供給できれば、昼間にそのまま売却する場合より高い価格を設定する。

こうした仕組みが整えば、家庭側にも蓄電池を導入する経済的なメリットが生まれる。

同時に、昼間に発電した電力を蓄えて需要の大きい時間帯に利用・供給することで、電力システム全体への負荷を抑える効果も期待できる。

「設置できる」だけでは家庭は動かない

ベトナムでは家庭用太陽光発電をめぐる制度が、徐々に「禁止や制限」から「普及促進」へと変わりつつある。

しかし、今回の状況が示しているのは、制度上の障壁を取り除くだけでは普及しないということである。

住民が設備を購入するためには、補助金が実際に受け取れるのか、年間どれだけ発電できるのか、蓄電池はいくらかかるのか、余った電力はいくらで売れるのか、そして何年で投資を回収できるのかが明確でなければならない。

特に太陽光発電は地域によって日照条件が異なるため、南部と北部を同じ制度で扱うことにも限界がある。

ベトナムで家庭用太陽光発電を本格的に普及させるには、「設置を認める制度」から一歩進み、家庭が投資判断をできるだけの明確な経済的メリットを示せる制度へ移行できるかが鍵となりそうだ。

※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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