前号で紹介した「カラオケ拷問」のニュースを深掘りしたい。今、ベトナムでカラオケ騒音への「被害者の声」が高まっており、自治体や警察も動いているようなのだ。今回もトイチェ紙から引用させていただいた。ベトナム人は怒ってるぞ!
昨年から続く静かな怒り
ベトナムで「カラオケ騒音」に対する怨嗟の声が増大している。その実際を前号で紹介したGoogleの機能を使って、ベトナムの有力新聞「Tuoi Tre」(トイチェ)の記事から見ていく。
「Karaoke」のキーワードで検索した記事を時系列で見ていくと、実はこの騒ぎは今年の2月後半から急速に広まっており、それ以前はほとんどない。ただ、昨年からその芽がいくつか散見される。
以下にその記事を載せるが、特にタイトルは機械翻訳の結果なのでわかりにくいものもある。また、記事からの筆者の判断が正確でないことも考えられる。どちらもご容赦いただきたい。
「カラオケスピーカー、スピーカーは『拷問』の隣人をホーチミン市人民評議会の会議テーブルに引き寄せます」(2020年7月9日)
ホーチミン市人民評議会で、すべてのレベルの人民委員会にカラオケを徹底的に処理するようにとの要請が話し合われた。「カラオケはもはや単なる娯楽ではなく、人々の生活と健康に影響を与える問題」と語られているが、実行力はまだ弱い状態だ。
「ホーチミン市天然資源環境局長:『キャンディースピーカー』の騒音への対応が難しい(2020年7月11日)
同じくホーチミン市人民評議会で、騒音違反の規制は天然資源環境省、市警察、地方自治体がすべきという話が出た。天然資源環境省は、大きな騒音源の騒音測定は複雑で、取扱いが困難と話している。
「ダナンは厳しく罰せられ、騒音は急激に落ちた」(2020年7月12日)
中部のダナンはカラオケ規制の先進自治体だ。2019年5月にダナン人民委員会の委員長が、都市部と住宅地での大音量の音楽やカラオケに厳密な処理を要請した。
これはそれから約1年後の記事。ダナン警察環境警察局と地域の警察が特殊な機器で騒音を測定したところ、最初の3ヶ月で816件をチェックして注意を喚起し、40件に合計で罰金3億2600万VNDを科したという。
カラオケが原因の事件が発生
年が明けて、立て続けに事件が起こる。以下はその記事タイトルだ。
「大声でカラオケを歌うのは義父に叱られ、夫は義父を刺し、負傷し、義姉を刺した(カントー)」(2021年1月5日)
「大声でカラオケを歌い、ビンチャインで二人が斬られ、被告人も斬られた(ホーチミン市)」(2021年1月25日)
「カラオケを歌いながらマイクがぎくしゃくし、ナイフで犠牲者を刺した(ティエンザン省)」(2021年1月25日)
このようなカラオケ騒音に起因した事件は以前からあり、大抵が飲酒時だ。トイチェは別の記事で、「カラオケの被害に遭ったら地域の警察に通報するか、立ち去ってください」と注意している。
カラオケに対する市民感情の高まりが当局に伝わったのだろう。この頃から自治体の動きが目立ってくるのだが、そのスピード感はさすがベトナムだ。
ホーチミン市で起こった動き
「グエン・タン・フォン氏:仕事に疲れ、夜にカラオケで拷問されても容認できない」(2021年2月26日)
ホーチミン市人民委員会のグエン・タン・フォン委員長は、特に午後10時以降のカラオケ騒音について多くの報告を受けていると述べ、「人々が疲れて家に帰って、カラオケで『拷問』されるのは容認できない。地方自治体や各部門はこの問題の責任を確認する必要がある」と強調した。ホーチミン市のトップが決意を表した意味は大きい。
「コミューン議長にカラオケ『飢え』を制裁する権利を追加することを提案し、罰金レベルを引き上げる」(2021年3月5日)
ホーチミン市の天然資源環境省は、騒音測定に関する法令155と罰金に関する法令167の修正を提案した。なぜなら、騒音の特定や測定は難しく、違反者は検査が始まればすぐに歌を止めてしまう。また、罰金額は10万~30万VND、時間帯は午後10時から翌朝の午前6時までと、抑止効果に乏しいからだ。
迷惑行為であるという注意喚起のキャンペーンや、住民からのホットラインの設置も提案した。
「6月30日からホーチミン市は騒音違反の検査と罰を急いで開催しました」(2021年3月19日)
ホーチミン市人民委員会がカラオケ騒音対策に本腰を入れた。6月30日までのフェーズ1では、市民や企業に注意を喚起し、厳格な法規制で臨むことを告知する。それ以降のフェーズ2では、カラオケ騒音違反の検査や監督をし、違反者は厳格に処罰する。
アンザン省とダナンも動く
他の自治体も動き出す。南部のアンザン省では、カラオケやポータブルスピーカーの使用が3月3日から禁止された。
「アンザンに集まって歌うためにモバイルカラオケを雇うことは、病気の予防に関する規制の違反と見なされます」(2021年3月3日)
カンボジアと国境を接する省であり、カラオケというより新型コロナ対策で、歌う行為や集会を一時停止したもの。しかし、人民評議会の会議でも騒音が問題になっており、人々やサービス事業者の意識の欠如を挙げて、「ゲストは大音量の新しい曲を開くことを決して望んでいない」としている。
3月23日の記事では20日間の成果が書かれており、ポータブルカラオケサービスなど639の事業所が営業停止を約束し、一時的に7人のポータブルスピーカーを押収し、31件で作業を停止するように通知した。
「ダナンはどのような規制に従って『カラオケの神』を強く扱っていますか?」(2021年3月23日)
3月17日夜にダナンの迅速対応チームが大音量の大型スピーカー2台を押収した。これにより目覚ましい変化があり、違反者が激減したという。そしてさらに規制を強める。
「ダナン:音楽を開いたり、カラオケを歌ったり、騒音を出したり、最高100万VNDの罰金を科せられます」(2021年4月1日)
ダナン司法省が法務省からのガイダンスを発表。大音量の音楽演奏やカラオケは人の健康や生活に影響を与え、公序良俗に反するので、ケースに応じて10万~100万VNDの罰金が科せられる。特に公共の場所に多くの人々を集め、公共の混乱を引き起こした行為は50万~100万VNDの罰金となる。
注意しても騒音は変わらず?
トイチェはカラオケを提供する店側の実態も取材している。
「通りに行った機能的な力は、騒音を減らすためにファム・ヴァン・ドン通りのビールの所有者を必要としました」(2021年3月17日)
3月16日夜にビンタン区の天然資源環境省が、ファム・ヴァン・ドン通りのパブのオーナーに大音量の音楽を流さないという署名をさせた。しかし、翌日の記事では……。
「政府による宣伝にもかかわらず、ファム・ヴァン・ドンはまだ音楽を吃音している」(2021年3月18日)
ファム・ヴァン・ドン通りは20以上の大小のビール屋台があり、ゴーバップ区、11区、13区にも同様のエリアがあるという。トイチェの記者が騒音を測定アプリで計測すると95~100dBA以上で、罰金の対象となる40dBAをはるかに超えていた。
近くに住む84歳の夫人は、「ビールバーは毎日音楽がうるさく、週末は午前1時から2時まで開いている。眠れずに抗議しても何も変わりません」と語っている。
「22:00以降、カラオケはまだ区の人民委員会の近くで『コンテスト』であり、ファム・ヴァン・ドン通りはまだ『低迷』している」(2021年3月20日)
トイチェの調べでは、3区のアパート下のパブでは住民を気にせずスピーカーを置き、1区の中心部では通り前でカラオケ大会を開催し、人民委員会本部近くでカラオケを歌う区もあり、午後10時以降のファム・ヴァン・ドン通りも相変わらず大音量のようだ。
「Gate 1022」への報告が続く
ホーチミン市が市民から情報を受け取るWebサイト「Gate 1022」には、カラオケに関する報告とその回答も書き込まれている。
「カラオケ『敬虔な』のニュースが1022番ゲートに駆けつけた」(2021年3月29日)
Gate 1022に3月28日夜、ホーチミン市の「邪悪なカラオケ」の数十の報告が載って、カラオケをしている住宅やカラオケ店の住所が集まったという。そう、この掲示板には皆が住所を書いているのだ。
例えば、12区の住所では定期的に大声で飲食が行われており、警察に電話しても変わらないので、ここにメッセージを書いたそうだ。以前はGate 1022への大音量カラオケの報告の多くが、当局によって対応されていたという。
「カラオケ新聞『吊るされた神』が1022番ゲートに絶え間なく送られている、どうやって対処するのか?」(2021年3月30日)
当局の対応の内容は多くの場合、Gate 1022上で返信されている。例えば、午後11時過ぎにカラオケをしていたビンタン区のカフェに当局が赴き、騒音規制の遵守を約束させたと書かれている。また、8区のカラオケ騒音への注意では、その後で加害者(?)が現場を掃除している画像もアップされた。
しかし記事によると、11区、12区、タンフー区、ホクモン県など、多くの住宅地で歌う声が鳴り響いているという。さすがに全てへの対処は難しい。カラオケ騒音問題はもう少し続きそうだ。