ベトナムビジネスならLAI VIENにお任せください!入国許可、労働許可証、法人設立、現地調査、工業団地紹介などあらゆる業務に対応します!お気軽にご相談ください!

【社会】癌を患いながらハノイで暮らすパレスチナ人男性

(C) VNEXPRESS

癌と闘いながら約2年間ハノイで生活してきたカラフ・アブアワドさんを最も驚かせたのは、ベトナムの見知らぬ人たちの親切さだった。

3月の週末の午後、60歳のカラフ・アブアワドさんは、ホアンキエム湖のほとりにある馴染みの場所に”キャンディーを買ってください”とベトナム語で書かれた段ボールの看板を持って座り込んだ。

若い男性がカラフさんの店のキャンディーバーを持っているのを見て、カラフさんは、指を10本立てて1万ドンというサインを送った。その若者は、2本のキャンディーバーを選んで5万ドンを渡し、お釣りはいらないという風に手を振った。カラフさんは、感謝の意味を込めて何度も頭を下げた。

5分後、フーン・タオさんを含むハノイ工科大学の学生グループがやってきてカラフさんを支援するためにお菓子を買った。タオさんは、SNSの動画で、たまたまベトナムにやってきた外国人男性が屋台で食品を売って生計を立てていることを知り、応援のために友達を誘ってやってきたと話した。「彼は陽気なんです。誰にでも積極的に挨拶をして、調子はどうかって聞いてきます。外見からは癌にかかっているとは分かりませんが、日々の生活に苦労しているみたいです。」とタオさんは話す。

カラフ・アブアワドさんは、パレスチナで生まれヨルダンに定住した。18歳の時、カラフさんは電気技師として働くためにクウェートへ行った。2017年の半ば頃、カラフさんは仕事を引退し、東南アジアでの新しい生活を探す旅に出た。「子供も妻もいませんから、老後を過ごせる静かで安全な場所に行きたいと思いました。」とカラフさんは話す。

カラフさんは、2年半かけてマレーシア、インドネシア、カンボジアを訪問した。40年かけて働いて貯めたお金は、宿泊代、食事代、ビザの罰金などで殆ど使い果たしてしまった。2020年2月にカラフさんがベトナムにやってきたとき、彼のポケットには500USDしか残っていなかった。

ベトナムにはヨルダン大使館がないため、カラフさんはパレスチナ大使館に連絡して、2か月間の宿泊施設の提供と1000万VNDの支援を受けた。さらに、カタール大使館も500万VNDを支援してくれた。カラフさんの説明によると、パレスチナ、ヨルダン、カタールは同じアラブ世界(アラブ諸国には22か国で構成されている。)の国なので、この22か国の国民は、訪れた国のアラブコミュニティの大使館に行けば支援を受けられるそうだ。

上記の支援以外に、カラフさんは、生活のためにハノイ市の旧市街にあるレストランでホールスタッフとして働いた。ベトナムに住んで数ヶ月したころ、カラフさんは癌にかかっていることが分かり、治療に行きやすいように路上販売を始めた。COVID-19感染拡大によって、商品が売れず、他の仕事もなかった時、カラフさんは生活のために空きビンなどを集めた。

今年に入って、カラフさんはホアンキエム湖のほとりで午後2時から夜11時まで雑貨を売る屋台の人として知られるようになった。屋台といっても、実際には様々な種類のキャンディーと爪楊枝やライターが入った2つのプラスチックの箱しかない。商品の値段は2000VNDから高くても1万VNDまでだ。カラフさんは、ベトナム語が出来ないので卸売りの場所を見つけることが出来ず、スーパーで仕入れた商品を販売している。

ある人が利益を得るために値段を2倍にするようアドバイスしたが、カラフさんは、「その値段だと他のところより高くなってしまう。高すぎて誰も買わなければ、家賃も薬代も払えないでしょう。」と話した。

通行人の注目を集めるために、カラフさんは知り合いのベトナム人に頼んで「キャンディーを買ってください。」という言葉を段ボールに書いてもらって足元に置いている。買いにくるお客さんの多くはたまたま通りがかった通行人と誰かから紹介されてやってきた人だ。カラフさんは、毎日平均15万から20万VNDの商品を販売しており、週末や祝日はさらに売上が多くなる。

「毎日、午後になるといつも彼は、ロースー通りの宿泊場所からここにやってきて商品を売っています。40℃を超える暑い日も、10℃を切る寒い日も彼は、そこに来て座るんです。大雨の時だけ、彼はうちの店の軒先に避難したいと頼んでくるんです。」と近所のアイスクリーム店の店員は話す。

彼がひとりで座り込んであまり商品が売れていないの見て、この店員と同僚は、少し余分にご飯を炊いてカラフさんに差し入れする。「家族がどこにいるのか知りませんが、ハノイに一人で住んでいるようです。彼を見ているとおなかが空いているのではないかといつも心配になります。」とこの店員は話してくれた。

(C) VNEXPRESS

カラフさんの苦しい生活状況を見て、パレスチナ大使館の職員が何度も彼に帰国用の飛行機チケットを提供すると申し出たが、カラフさんは断っている。カラフさんによると、ヨルダンでの治療費は高額で年間5万USDも必要となる。一方のパレスチナでは、社会状況が安定しておらず、兄妹たちもバラバラになっている。カラフさんは誰にも迷惑をかけたくないと話す。

カタール大使館の専門家でベトナムのパレスチナ人コミュニティのメンバーでもあるサリーム・ハマド氏は、「COVID-19の感染が拡大して以降、長い期間にわたってパレスチナ大使館がカラフさんをサポートしてきました。帰国するための飛行機チケットまで提供しようとしましたが、彼は個人的な理由で断りました。彼が苦しい状況にいることは知っています。私と知り合いは彼にお金をカンパしましたし、健康状態を訪ねるためによく店にも行きます。」と話す。

K病院タンチェウ分院のチャン・タン医師は、カラフさんが進行性の胆管癌患者であり、病院で治療を受けていることを認めた。当初、カラフさんは医科大学病院で診察を受けたが、2021年になって、K病院に転院してきた。現在、カラフさんは、化学療法と放射線治療のために健康状態が良くない。

カラフさんは平均して月に1000万VND近くの治療費を払っている。病院の治療費と薬代は、路上販売の売り上げと篤志家の寄付によって賄われている。「少し前に、彼は数千万VNDの支援を受けたので、バスに乗って病院まで来てたまっていた治療費を支払いました。」とタン医師は話し、病院側もカラフさんが治療に専念できるように支援先を探していると説明してくれた。

治療費に加えて、カラフさんは、屋台から500mほど離れたロースー通りの宿泊施設に毎月300万VND以上を支払っているが、時にはお金がなくて、支払いを待ってもらうこともある。「どのような状況であってもカラフさんは信用のおける人です。支払いが遅れそうなときには数日前には連絡してきますし、約束した日には必ず払ってくれます。カラフさんの困難な状況を知っていますので、家賃も半額にしてデポジットももらってません。」と宿泊施設の管理者は話す。

カラフさんは、帰国を断った最大の理由はベトナム人から受けた愛情にあると打ち明けてくれた。彼は、これまでに多くの国を旅したが、見知らぬ人が治療費のためにお金を寄付してくれたり、学生や通行人がバインミー、ミルク、おかゆ、フォーを差し入れてくれる国を知らないと語った。医師たちも貧しい外国人を熱心にサポートしてくれる。

「60年の人生で、色々なところに行きましたが2年化の滞在によって今は、ベトナムが私の家で、ベトナム人が私の家族です。健康状態が落ち着いたら、子供たちが生きた英語を話せるようにするために、無料の英会話教室を開きたいです。私は、この素晴らしい国に恩返しがしたいんです。」とカラフ氏は涙を浮かべながら話した。

多くの人が、彼の健康状態を心配して、屋根付きの場所で商品を売るように勧めたが、カラフさんは断った。「ここで売るのに慣れちゃったから」と彼は笑う。

数日前、SNS上で、ホアンキエム湖の畔でキャンディーを売っている外国人の30秒ほどの動画が共有されると、多くの人が反応した。この動画と写真には、数百万のいいねが押され、カラフさんの店で買い物をしたことがある人たちが同情的なコメントを残した。

「先日、たまたま歩行者天国で彼に会いました。彼はとても礼儀正しくて、フレンドリーでした。多くの人がごみを路上に捨てていたので、彼は、それを拾って片付けていました。とても素敵でした」とあるユーザーはコメントしている。

出典:29/03/2022 VNEXPRESS
上記を参考に記事を翻訳・編集・制作