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ベトナム不動産の「2重価格取引」に注意 契約書の過少申告で脱税・代金回収リスクも

マンションや住宅が並ぶホーチミン市の中心部
(C)THANH NIEN

ベトナムの不動産取引で、実際の売買価格より低い金額を契約書に記載し、税金や手数料を抑えようとする「2重価格取引」が問題となっている。税負担を軽減するための過少申告が、税務上の問題だけでなく、売買契約をめぐる紛争が起きた際に、当事者自身の大きなリスクとなるケースが相次いでいる。

実際の取引価格と契約書上の価格に数十億VND単位の差が生じている事例もあり、裁判では契約が無効と判断されたケースや、税金の追徴、行政処分、さらに脱税行為について捜査を求める動きも出ている。

実際は200億VND、契約書には50億VND

2026年9月末、カントー市警察は、土地の売却価格を実際の受取額より低く申告したとして、79歳のゴー・キム・ガウ氏について「脱税」の容疑で刑事事件として立件し、被疑者として取り調べを進めるとともに、出国を禁止する措置を取った。

捜査によると、同氏は2022年、土地1区画を実際には200億VNDで売却したものの、公証契約書には売買価格を50億VNDと記載していた。

この過少申告により、納付すべき税金や手数料が少なくなり、個人所得税は3億VND、登録料は7500万VNDと算定されている。

この事例が示すように、不動産価格を実際より低く契約書に記載する行為は、税収への影響だけでなく、売買当事者自身が後に大きな問題を抱える可能性がある。

「2重価格取引」では紙の価格と実際の価格が大きく乖離

ホーチミン市人民検察院第9部が民事事件の資料を調査したところ、2024年から2026年上半期までに、土地使用権、不動産売買契約、住宅売買などに関する訴訟は1188件に上った。このうち940件については法令に基づく処理が行われている。

その中で詳細な調査を行ったところ、売買契約書に記載された価格と実際の取引価格が一致していない、いわゆる不動産の「2重価格取引」が明確に確認された典型的な事例が10件あった。

10件は、裁判にまで発展した事例に限られる。そのため「2重価格取引」全体の規模を示す数字ではないが、裁判資料からは、契約書上の「紙の価格」と実際の売買価格との間に、数十億VND規模の差が生じている実態が浮かび上がっている。

一般的な手法は、実際の売買価格を記載した裏の合意書や手書きの領収書などを別途作成する一方、公証する売買契約書には、税金などの負担を抑えるため、実際より低い価格を記載するというものである。

35億VNDの契約書だが実際は145億VND

典型例の一つが、現在のホーチミン市にあたる旧トゥードゥック市で起きた土地・住宅の売買をめぐる紛争である。

2018年5月9日、290平方メートルの土地について売買契約が締結され、公証された契約書には売買価格として35億VNDが記載されていた。

しかし、資料や領収書、当事者間の実際の合意内容を調べた結果、実際の取引額は145億VNDだったことが判明した。契約書に記載された金額との差額は110億VNDに達する。

別の事例では、現在のホーチミン市にあたる旧ロンザット県の26区画について、公証された手付契約には取引額を71億VNDと記載していた。一方、裁判では、実際に当事者間で合意されていた売買価格は107億VNDだったことが明らかになり、差額は36億VNDとなった。

さらに大きな差が確認されたケースもある。

旧フーミー市で起きた土地使用権をめぐる訴訟では、514平方メートルの土地について実際の売買価格が10億7000万VNDだったのに対し、2020年3月20日に公証された売買契約書には、わずか2000万VNDと記載されていた。

実際の価格に対し、契約書上の価格は53分の1以下である。

住宅価格30億VNDに対し契約書は1億VNDのケースも

同様の事例はほかにも確認されている。

旧ホーチミン市1区では、市場価格がおよそ30億VNDとみられる住宅について、公証された売買契約書には1億VNDしか記載されていなかったケースがある。

また、契約書には6000万VNDと記載されている一方、実際には土地と建物を合わせて数億VNDから数十億VNDの価値があるとみられる不動産取引も確認されている。

こうした案件では、裁判所や検察当局が紛争を処理するだけでなく、税務当局に対して税金の追徴を求めたり、脱税に当たる可能性について警察による捜査を求めたりしている。

最大のリスクは「契約書に書いていない代金」

2重価格取引の問題は、税金だけではない。

実際の売買価格より低い金額を公証契約書に記載した状態で、後に買い手と売り手の間で紛争が発生すると、契約書に記載されていない差額が買い手側にとって大きなリスクとなる。

過去の確定判決を見ると、公証契約書に実際の取引価格より低い金額を記載していたケースでは、裁判所が契約を「偽装された取引」として無効と判断した例がある。

契約が無効となれば、原則として当事者は互いに受け取ったものを返還することになる。

ここで問題になるのが、実際の売買価格を証明できるかどうかである。

例えば、契約書に35億VNDと記載されている一方、実際には145億VNDを支払っていた場合、その差額110億ドンについて、銀行振込記録や適切な領収書などの証拠がなければ、買い手が実際に支払った金額を証明することが難しくなる。

その場合、売り手側が契約書に記載された35億ドンだけを返還すると主張する可能性があり、買い手は契約書に記載されていない差額の回収で困難に直面することになる。

税金の追徴や行政処分、刑事捜査につながる可能性

さらに、買い手と売り手の双方が税務上の問題に直面する可能性もある。

実際の売買価格が145億VNDだったにもかかわらず、契約書には35億VNDと記載されていた案件について、ホーチミン市人民検察院は脱税の疑いがあるとして、旧ホーチミン市税務当局に対し、取引価格を再確認した上で、個人所得税や登録料、延滞金などを追徴するよう求めた。

さらに、税務管理法や関連政令に基づき、虚偽の申告に対する行政処分についても検討するよう求めている。

別の土地取引をめぐる手付金契約の訴訟では、71億VNDで売却した土地について当事者間で正式な売買を記録せず、その後、委任契約を通じて107億VNDで第三者に売却したとされる事例がある。

この裁判では、ホーチミン市人民裁判所第13地域が、実際に71億VNDで土地を譲渡していたことが確認された場合、脱税行為に当たるかどうかについて、ホーチミン市警察の捜査機関が検討・捜査するよう求めた。

「節税」のつもりが取引そのものを不安定にする

不動産取引で実際の売買価格より低い金額を契約書に記載する「2重価格取引」は、税金や登録料の負担を抑える手段として行われるケースがある。

しかし、取引後に紛争が発生した場合、契約書に記載されていない金額を証明できなければ、買い手が支払った代金を十分に回収できないリスクが生じる。

加えて、税務当局による追徴や行政処分のほか、事案によっては脱税行為として捜査の対象となる可能性もある。

不動産取引では、目先の税負担だけを見るのではなく、実際の取引価格を契約書に正確に反映し、支払いを証明できる記録を残すことが、当事者自身のリスク管理という面でも重要になっている。

※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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