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ベトナム不動産、メトロ開通で価値に変化 「駅までの距離」より「移動時間」が重要に

ホーチミン市のメトロ1号線
(C)THANH NIEN

ベトナムの都市部でメトロ(都市鉄道)の整備が進むなか、不動産市場にも変化が表れている。これまで住宅選びでは「中心部から何キロ離れているか」といった距離が重視されてきたが、現在は「実際に目的地まで何分で行けるか」というアクセス性が重要な判断材料になりつつある。

ベトナム不動産市場研究・評価研究所(VARS IRE)によると、メトロ駅へのアクセスが良好な物件では、直近2年間の価格上昇率が市場全体を約10~20%上回ったという。

ハノイとホーチミン市でメトロ網が拡大

ハノイでは、約18路線、総延長約979kmの都市鉄道ネットワークと、複数のTOD(公共交通指向型開発)拠点の整備が計画されている。

現在、カットリン~ハドン線が営業運転を行っているほか、ニョン~ハノイ駅線は2027年12月から全線開業する予定である。さらに、ハノイ市では2026年に入り5つのメトロ路線の着工が進められており、総延長は300kmを超える。これらは2030年をめどに基本的な整備を完了する計画である。

ホーチミン市とその周辺地域でも、約28路線、総延長約1,100kmに及ぶメトロ網の整備が構想されている。

メトロ1号線(ベンタイン~スオイティエン)はすでに営業運転を開始しており、2号線(ベンタイン~タムルオン)も着工済みで、約5年後の完成が予定されている。このほか、2026年末までに着工を予定する4つのメトロ計画があり、総延長は約138.8kmに達する。

こうした大規模な公共交通網の整備は、都市の移動時間だけでなく、沿線の不動産市場にも影響を与える可能性がある。

「何km離れているか」から「何分で行けるか」へ

VARS IREによると、メトロを都市計画と一体的に整備することで、不動産の価値は単純な地理的距離だけではなく、「目的地へのアクセスのしやすさ」と結び付くようになる。

例えば、中心部より住宅価格が25~40%程度安い郊外や衛星地域であっても、メトロへの接続が良ければ、住宅取得費と通勤・移動コストの双方を抑えられる可能性がある。

世界各地でも、公共交通機関へのアクセスが良好な不動産は、周辺の一般的な物件より価格上昇が大きくなるケースが確認されている。

ベトナムではメトロの本格的な営業運転が始まってからまだ日が浅いため、交通インフラが不動産価格に与える影響を長期的に検証するには、さらにデータの蓄積が必要である。

それでも、初期段階のデータからは、公共交通へのアクセスが不動産価値を左右する要素として市場に認識され始めていることが分かる。

VARS IREの調査では、直近2年間、メトロ駅へのアクセスが良好な物件の価格上昇率は、市場全体より約10~20%高かった。

「駅から500m」だけでは判断できない

ただし、メトロ駅に近ければ、どの物件でも同じように価値が上昇するわけではない。

例えば、地図上では駅から500mしか離れていなくても、歩道が整備されていない、道路を安全に横断しにくい、バスとの接続が悪いといった問題があれば、実際の利便性は大きく低下する。

TODは単にメトロ駅の周辺に住宅を建設することではない。住宅と職場、学校、商業施設、医療などの日常的な目的地を、公共交通によって効率的につなぐ都市構造を形成することが重要である。

そのため住宅購入者が見るべきなのは、「駅から何mか」だけではない。

「この住宅から、どこへ、何分で、いくらで行けるのか」

という視点が重要になる。

同じ駅から500mの物件でも、駅まで安全に歩けるか、バスに乗り換えやすいか、職場や学校までの所要時間がどの程度かによって、実際の価値は大きく異なる。

住宅価格だけでなく「移動コスト」も考える

VARS IREは、住宅価格だけでなく、購入後に発生する交通費や移動時間も含めて住宅の価値を考える必要があると指摘する。

例えば、45億VNDの住宅がメトロ駅から3km離れている一方、50億VNDの住宅が駅から500mの場所にあるケースを考える。

後者の住宅価格は高くても、公共交通との接続が良ければ、自家用車への依存を減らし、通勤や日常生活にかかる費用を抑えられる可能性がある。

VARS IREのグエン・バン・ディン会長は、仮に燃料代、駐車料金、車両の維持費などを毎月400万VND節約できれば、10年間で4億8,000万VND、20年間では9億6,000万VNDの節約になると試算している。

さらに重要なのが「時間」である。

通勤や子どもの送迎、買い物などで毎日長時間を移動に費やしていれば、その時間は仕事や家族との時間、休息に使えない。つまり、移動時間も住宅選びにおける「機会費用」と考えることができる。

郊外住宅に新たな選択肢

このため、初めて住宅を購入する人や予算に限りがある世帯にとって、郊外や衛星地域は今後、有力な選択肢になる可能性がある。

中心部より住宅価格が安く、メトロへの接続が良好であれば、購入時の負担を抑えながら、通勤などの日常的な移動コストも削減できるからである。

ただし、そのメリットを享受するためには、メトロが計画通りに整備されることに加え、駅までの歩行環境、バスなどとの乗り継ぎ、実際の通勤経路との適合性なども重要になる。

ベトナムの都市部では今後、メトロ網の拡大とともに、「中心部に近い物件」から「目的地に効率よくアクセスできる物件」へという住宅選びの基準が広がる可能性がある。

不動産の価値を測る物差しは、単純な「距離」から「時間とコスト」を含めた総合的なアクセス性へと変わり始めている。

※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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