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ベトナム企業、デジタル技術で成長の壁を突破 中小企業も海外市場へ直接進出

オンライン販売の撮影現場
(C)TUOI TRE

従来、企業が事業を拡大するには、資金を調達し、土地や工場、倉庫、販売拠点を増やす必要があった。しかし、デジタル経済の拡大によって、こうした成長の前提が変わりつつある。電子商取引(EC)、ライブ配信販売、人工知能(AI)、クラウドなどを活用すれば、大規模な店舗網や人員を抱えなくても、多くの顧客に商品やサービスを届けられるためだ。

ベトナムでは、ココナツ花蜜を手がけるソクファーム、スマートプロジェクターのビークーブ、AIロボットを開発するナイスコープなど、デジタル技術を成長の原動力とする企業が登場している。国内市場での販路拡大に加え、海外市場への直接販売や新たな事業モデルの構築も進んでいる。

ECとライブ配信で地方の農産品を全国へ

ベトナム企業がデジタル技術によって成長機会を広げている事例の一つが、ココナツ花蜜製品を製造・販売するソクファームである。

2018年、ココナツの価格下落に直面した創業者のタック・ティ・チャル・ティ氏とファム・ディン・ガイ氏は、地元農産物の付加価値を高めるため、ココナツの花蜜を加工する事業に着目した。2019年6月17日に創業した同社は、有機ココナツ花蜜の生産・販売・輸出を展開し、農家が得るココナツの経済価値を従来の2~4倍に高めることを目指してきた。

海外の厳しい品質要求に対応するため、低温真空濃縮技術と超高温殺菌(UHT)を組み合わせ、生産工程の標準化にも取り組んだ。2025年には約100万点の商品を市場に投入し、輸出数量を150%以上伸ばしたという。

販売面でもデジタル技術が大きな役割を果たしている。2025年初め、TikTok Shopでの月間売上高は1,000万~3,000万VNDにとどまっていたが、公式ブランド向けの「TikTok Shop Mall」への移行に加え、ライブ配信、アフィリエイト販売、自動広告を組み合わせたことで、初月の売上高は911%増加した。注文数は6倍となり、アフィリエイト経由の売上高は25倍に拡大した。

同社によると、2026年6月にはTikTok Shop経由の月間売上高が20億VNDを超えた。地方の原料産地で生産された商品でも、ライブ配信を通じて大都市の消費者に直接アプローチできるようになったのである。

同社のファム・ディン・ガイ創業者兼最高経営責任者(CEO)は、ソクファームの商品は現在、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどに広く流通し、数十カ国への輸出も行っていると説明する。デジタル販売は既存の流通網を置き換えるだけでなく、消費者との接点を増やす手段にもなっている。

実店舗に頼らず販売を拡大、ロボット事業も海外へ

小型スマートプロジェクターを展開するビークーブも、デジタル販売を成長につなげた企業の一つだ。2021年に設立された同ブランドの商品は、購入前に実際の使用感を確かめたい消費者も多く、従来型の販売ではショールームや販売スタッフへの投資が必要だった。

同社は2023年からTikTok Shopに力を入れ、商品紹介コンテンツやライブ配信設備への投資、運営プロセスの改善を進めた。その結果、同プラットフォーム経由の売上高は小売事業全体の約半分を占めるまでに拡大し、会社全体の売上高も1年間で250%増加したという。

一方、AIやロボティクスへの事業転換を進めるナイスコープは、デジタル技術を新たな製品・サービスの開発に活用している。AI、ビッグデータ、クラウド、IoT、デジタルツイン、生成AIなどを段階的に取り入れ、AIを組み込んだサービスロボットの開発に注力している。

デジタルツインを使って実環境への導入前に動作や運用をシミュレーションし、効率を検証するほか、収益モデルも多様化している。ロボット本体の販売に加え、ロボットをサービスとして提供する「RaaS」、AIソフトウェアをサービスとして提供する「SaaS」、技術ライセンスなどを組み合わせる。

同社によると、開発したロボットは病院、銀行、飲食店、大学などで導入されており、世界で50を超えるパートナーと連携している。商用ロボットは4シリーズを展開し、オーストラリアのパートナー向けに100台を供給する計画も進めている。

家庭・小売分野では、ロボット、AI、IoTを組み合わせたスマートホームロボットの開発も進行中だ。音声による対話、セキュリティー監視、室内環境のモニタリング、高齢者や子どもの見守りなどを担うシステムを目指している。

米国市場への進出もECで加速

デジタル技術は、ベトナム企業の海外展開にも変化をもたらしている。即席麺や加工食品などを手がけるVIFONは、約30年にわたって米国市場で販売してきた。これまでは輸入業者や代理店を開拓し、小売チェーンとの取引を確立してから店頭販売を広げる方法が中心だった。

しかし2026年、同社は越境ECを活用した販売拡大に乗り出した。5月には米国のTikTok Shopに公式店舗を開設。試験販売を始めて間もなく、同プラットフォームの売上高は、米国で並行展開する他のECチャネルの3~4倍に達したという。

今後は現地のコンテンツクリエーターとの連携を強化し、2026年中に米国TikTok Shopで3桁成長を目指す方針である。

この動きは、ベトナムの消費財企業にとって重要な意味を持つ。従来は複数の流通業者や小売業者を経由する必要があったが、ECを利用すれば、企業からデジタルプラットフォームを通じて消費者に直接商品を届けられる。現地向けのコンテンツやクリエーターとの連携を組み合わせることで、海外市場との距離を縮められる可能性がある。

国内市場でも、デジタル技術による販売の効率化が進んでいる。ベトナムのソーセージ製造事業者ラップスオン・ニュー・フインでは、ECが主要な販売チャネルとなり、総売上高の約80%を占める。広告予算の最適化、コンテンツ配信、広告運用などを自動化することで、ライブ配信、顧客データ、アルゴリズムを組み合わせた販売プロセスを効率化し、人員を大幅に増やさずに販売活動を拡大している。

企業規模よりも技術活用力が競争力を左右

ホーチミン市工業商科大学のファム・ミン・ティエン博士は、デジタル経済がもたらす大きな変化として、企業が市場を拡大するために、必ずしも大規模な資産を保有する必要がなくなっている点を挙げる。

従来、事業の拡大には資金、土地、工場、倉庫、輸送手段、販売拠点、人員などの確保が必要だった。現在は、こうした機能の一部をデジタルサービスで補える。高額なサーバー設備をクラウドに置き換えたり、ECプラットフォームで広域の販売網にアクセスしたり、AIで従来は部署単位で対応していた業務を支援したりすることが可能になった。

ライブ配信やソーシャルコマースも、実店舗を多数構えずに消費者と直接つながる手段となっている。ただし、技術が資金や物理的な設備の必要性をなくすわけではない。製造には工場が必要であり、商品を届けるには物流機能も欠かせない。重要なのは、技術によって事業拡大に必要な投資の一部を抑え、成長の選択肢を広げられる点である。

会計・経営管理ソフトウェアを手がけるMISAのレ・ホン・クアンCEOは、AIエージェントを活用した「エージェンティック・エンタープライズ」の可能性を指摘する。従業員10人の企業でも、業務の自律化を進めることで、従業員100人の企業に匹敵する効率を実現できる可能性があるという。

このモデルでは、AIエージェントが目標の受け取り、データ分析、計画策定、施策の提案、実行、結果報告などを支援する。人間は不要になるのではなく、戦略の策定、業務プロセスの設計、リスク管理、重要な意思決定の承認、最終的な責任を担う役割へと移行する。営業、マーケティング、顧客対応、経理、人事、業務運営など、さまざまな部門で定型業務の効率化が期待される。

データとAIが新たな生産基盤に

ベトナム社会科学院のグエン・タイン・コン博士は、デジタル時代には生産力の構造そのものが変化していると指摘する。データやデジタル技術は単なる補助ツールではなく、生産性、効率、競争力を左右する重要な生産資源となりつつある。

これに伴い、労働者の価値も肉体的な労働力だけでは測れなくなっている。知識、デジタルスキル、創造性などがより重要になり、人材、データ、技術、デジタルインフラの組み合わせが、新たな生産力の基盤を形成しているという。

こうした変化は、企業の事業領域を広げる。小規模な製造業者でも遠方の顧客を開拓でき、新興ブランドが大企業と同じデジタルプラットフォーム上で競争することも可能となる。地方の製品が、国境を越えて国際的なサプライチェーンに参加する道も開かれている。

企業の成長を左右する要素は、資金や土地、設備だけではない。自社の商品・サービスをデータや技術、人材、デジタル市場と効果的に結び付けられるかどうかが、今後の競争力を大きく左右することになりそうだ。

※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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