「水に関する知」でこの国の産業に貢献
ベトナムで広げる水処理ビジネス
あらゆる産業の基盤となる「水」。クリタグループのベトナム法人であるKURITA-GK VIETNAMは水処理薬品と技術サービスを軸に、今後は水処理装置事業の拡大も目指す。知る人の少ない水処理事業について中井俊明社長が語る。

産業の裏側で「水」を支える
―― ベトナム進出の経緯を教えてください。
中井 弊社の親会社は1989年にタイで設立されたKURITA-GK CHEMICALで、長年タイ、ベトナム、カンボジアで水処理事業を展開してきました。ベトナム市場の成長を背景に、お客様に寄り添い迅速なサービスを提供するため、2016年にKURITA-GK VIETNAMを設立しました。
現在はハノイとホーチミン市の2拠点体制で、日系企業に加え、地場企業や韓国系、中華系といった外資系企業もサポートしています。

―― 具体的な事業内容とは何でしょうか。
中井 グループの中心である栗田工業は水処理に関する幅広い事業をグローバルで手掛けていますが、弊社の主な事業は水処理薬品の販売とそれに付随する技術サービスです。
お客様は数百社に上り、製造業の工場を中心にショッピングモールやホテルにもサービスを提供しています。冷却水、純水装置(RO膜)、ボイラの3領域が柱となっています。
まず冷却水です。工場やビルの冷却塔では、水の蒸発による気化熱で冷却しますが、この過程で水中成分が濃縮され、腐食、スケール、スライム(微生物汚れ)などの障害が発生します。最適な薬品処理で腐食や汚れを抑制し、設備の安定運転と省エネルギーに貢献します。
半導体や電子部品関連で欠かせないのがRO膜(逆浸透膜)用の薬品です。RO膜は逆浸透の原理で不純物を除去しますが、目詰まりが最大の課題です。
カルシウムやシリカ等によるスケール、バクテリア由来のスライムによる膜閉塞を防ぐため、適切な分散剤や殺菌剤を供給し、安定した純水供給を支えています。RO膜の汚れ成分を特定し、最適な洗浄剤も提供しています。
3つ目が蒸気を作るボイラです。ボイラ内部で水が加熱されると、金属の腐食やスケールの付着が起こり、設備の寿命を縮めるだけでなく、熱効率の悪化による燃料費増大を招きます。これらを防ぐ水処理薬品を供給し、安全かつ経済的な運転をサポートしています。
最適な水処理ソリューションの提供に向け、課題ヒアリングから効果検証まで段階的に対応します。初回案件では、通常3~6ヶ月程度を要します。
そして、最適な水処理ソリューションには3つの要素の把握が欠かせません。

―― 詳しく聞かせてください。
中井 まず、水源(井戸水・河川水など)に応じた水質分析を行い、水質特性を把握します。原水が工業用水とリサイクル水の混合水のように複数存在する場合は水バランスも確認します。
次に重要なのが設備の種類です。ボイラであれば、これまで採用されてきた水管ボイラや丸ボイラなのか、近年主流の高効率なパッケージボイラなのかです。高効率な設備は一般的に単位伝熱面積当たりの熱負荷が高く、腐食やスケールのリスクも大きくなりがちで、設備特性に合わせた水処理ソリューションの構築が不可欠です。
最後が用途の確認です。ボイラでは蒸気の使用方法に応じて薬品選定が異なります。食品・飲料向けの直接加熱では安全性を重視し、熱交換器を介する間接加熱では設備保護や防食性能を重視します。
新設の工場やビルでは、水質情報、設備仕様、蒸気の用途、水バランス、運転条件などを総合的に確認し、最適な水処理ソリューションを提案します。
弊社の強みは、単に薬品を販売するのではなく、グローバルで蓄積された「水に関する知」を活用して課題解決を提案できることです。お客様からご相談いただいた課題だけではなく、潜在的な課題も探ります。安定稼働していてもエネルギーロスや過剰な水使用があるからです。
また、水処理薬品は販売後の管理が重要です。定期的な水質診断や設備開放時の内部点検(目視・ファイバースコープ)を通じて、設備の異常や腐食を確認します。
変化や課題をタイムリーに把握し、お客様と一緒に改善を積み重ねていくことが大切になります。このようにお客様に寄りながら課題解決を支援できる、セールスエンジニアが弊社の強みです。
ベトナムの特徴と課題
―― ベトナムならではの特徴はありますか。
中井 お客様の業種が南北で大きく異なります。北部では韓国系や中華系の半導体や電子部品関連のメーカーが多く、純水設備への需要が高い。一方、南部では食品、化学、製紙産業が多く、ボイラや排水処理に関するニーズが高まっています。近年は中華系企業の進出も目立ちます。
また、最近ではQCVN 40など環境規制の厳格化もあり、排水処理水質の高度化や再利用、省エネへの意識が高まっています。
そこで弊社では、薬品と設備改善の両面から、お客様の設備をより効率的かつ長期的に運用するための提案を行っています。例えば、老朽化した設備の更新や省エネルギー化の提案などを通じて、薬品だけでなく水処理設備も含めた総合的なソリューションの提供に注力しています。
近隣諸国ではシンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムの5ヶ国に拠点があり、これらは「クリタASEAN」として一体運営されています。ベトナムで難しい課題に直面しても、他国で培った知見や実績を活用し、最適な解決策を提案できます。

―― 今後の予定や計画について教えてください。
中井 クリタグループとして、事業活動を通じて社会課題にも貢献する、CSVビジネスの拡大を掲げています。節水、温室効果ガス排出削減、廃棄物の資源化などで、ベトナムでも実現を目指します。新しい洗浄技術やAIを活用したデジタルソリューションなど、新たな事業領域にも積極的に取り組んでいきます。
弊社は今年創立10周年を迎えます。20周年までに事業規模を現在の10倍以上に拡大し、ベトナムを代表する水・環境ソリューション企業の一つを目指します。
水は社会を支える重要なインフラです。お客様の生産活動を支え、課題解決に取り組み、ベトナムの産業発展にも貢献していきたいと考えております。






























KURITA-GK VIETNAM
中井俊明 Toshiaki Nakai
大学卒業後に栗田工業に入社。半導体、自動車、化学、食品、石油など幅広い業界で水処理薬品セールスエンジニアとして18年間従事。2022年4月にインドネシアに赴任し、2026年4月より現職。