2025年に国会で可決されたベトナム個人所得税法が2026年7月から正式に施行された。新制度では、免税対象となる所得項目の拡充に加え、人的控除額の引き上げや税率体系の簡素化が実施され、納税者負担の軽減が図られている。
政府は社会保障の充実だけでなく、投資促進、イノベーション推進、環境保護、人材確保などの政策目的を税制に反映させたとしている。
21種類の所得が非課税対象に
新法では、個人所得税が免除される所得は21項目となった。
従来から認められていた親族間の不動産譲渡や相続・贈与による所得は引き続き非課税となる。
主な非課税対象には以下が含まれる。
- 配偶者や親子間の不動産譲渡
- ベトナム国内で唯一保有する住宅・土地の売却益
- 預金利息
- 国債利息
- 生命保険契約による収益
- 海外送金(送金収入)
新たな免税措置を導入
今回の改正では、新たな免税対象も追加された。
農業協同組合の配当所得や大規模農業プロジェクトへの参加による収益、グリーンボンドや地方債の利息などが対象となる。
さらに注目されるのが、高度デジタル産業人材への優遇措置である。
半導体、戦略技術、高度デジタル産業分野の研究開発業務に従事する高技能人材については、給与所得に対する個人所得税が最長5年間免除される。
これはベトナムが掲げるハイテク産業育成政策を税制面から支援するものと位置づけられている。
また、保有期間が2年以上のオープンエンド型投資信託の譲渡益も非課税となり、証券投資ファンドや不動産投資ファンドから得る配当所得については税額が50%軽減される。
課税最低ラインを引き上げ
賞金、著作権収入、フランチャイズ収入、相続、贈与などについては、課税対象となる基準額が従来の1,000万VNDから2,000万VNDへ引き上げられた。
対象となる所得には以下が含まれる。
- 懸賞や賞金収入
- 著作権使用料
- フランチャイズ収入
- 相続財産
- 贈与所得
- ベトナム国家ドメイン「.vn」の譲渡
- 炭素クレジット取引
- 排出権譲渡
- オークション取得ナンバープレートの売却
- デジタル資産譲渡
課税開始基準の引き上げによって、一定規模以下の所得については税負担が軽減される見通しである。
給与所得の税率区分を5段階へ簡素化
個人所得税の累進税率についても改正が行われた。
従来の7段階から5段階へ簡素化され、人的控除額も増額された。
新たな控除額は以下の通り。
- 納税者本人:月額1,550万VND(年間1億8,600万VND)
- 扶養家族:1人当たり月額620万VND
また、個人事業主や家計事業者については、個人所得税の課税対象となる年間売上基準が10億VNDへ引き上げられている。
これらの規定は2026年初頭から適用が始まっている。
さらに、納税者本人および扶養家族の医療費や教育費についても、政府が定める範囲内で所得控除が認められることになった。
電子商取引やデジタル資産も課税対象に
一方で、個人所得税法2025では新たな課税対象も追加された。
具体例として、
- 代理業務や仲介活動による所得
- 電子商取引による収益
- デジタルプラットフォームを利用した事業所得
- 金銭・現物を問わない各種報酬
- デジタル資産譲渡所得
- 金地金の譲渡益
などが新たに課税対象として明確化された。
科学技術分野への優遇色が鮮明に
専門家からは、今回の税制改正は納税者の負担軽減だけでなく、国家戦略として推進する科学技術産業への支援策としても評価されている。
特にデジタル産業人材への5年間免税措置は、ベトナムが高度人材を確保し、半導体やAIなど先端分野の競争力強化を目指す姿勢を示すものと言えそうだ。
その一方で、電子商取引やデジタル資産市場の急拡大を背景に、新たな経済活動を税制の枠組みに取り込む動きも加速している。ベトナムの個人所得税制度は、産業政策と税制改革を連動させる新たな段階に入ったとみられる。




















