ベトナムで若年層の就職観を巡る課題が浮かび上がっている。給与や勤務時間、働きやすさなど目先の条件を重視する一方、実際に就職すると仕事のプレッシャーや企業文化とのギャップに直面し、短期間で離職するケースも少なくない。
専門家からは、若者自身が「安全圏」から一歩踏み出して仕事の機会をつかむとともに、AIによって急速に変化する労働市場に対応するため、生涯にわたって学び続ける能力を身につける必要があるとの指摘が出ている。
給与や働きやすさを優先する若者
ハノイ市の就職サービスセンターでは、失業給付の手続きをする労働者が多く訪れている。一方で、新たな仕事を積極的に探している人はそれほど多くない。
ある企業が複数の職種で採用活動を行っていたにもかかわらず、午前8時から11時までの間に採用ブースを訪れたのはわずか1人だったという。特に若者の姿が少なかった。
同社の人事担当者によると、失業保険の手続きに訪れた人に声をかけると、「すぐには働きたくない」「自分で仕事をしたい」と答える人が多く、就職を急いでいない様子が目立つという。
また、大学を卒業したばかりの若者や社会人経験2~3年程度の若者の場合、仕事そのものよりも給与水準や勤務時間を先に尋ねる傾向があるという。
かつては、まず低い給与からスタートし、経験を積みながら社員、チームリーダー、管理職へと昇進していくキャリアを受け入れる人が多かった。しかし現在は、昇進や長期的なキャリア形成よりも、「仕事が楽か」「給与が高いか」といった目先の条件を重視する若者もいる。
その結果、大学卒業後にオンライン販売やスパ施設の運営など、数年間働いてから次の仕事を考えるような選択をするケースもあるという。
就職後に「理想と現実」のギャップ
ベトナム国家雇用サービスセンターの責任者は、若い労働者、特に大学を卒業したばかりの人が、就職前には仕事に対して大きな期待を抱いていると指摘する。
しかし、実際に職場に入ると、仕事のプレッシャーや企業文化、生産性に対する要求などは、学生時代に想像していたものとは大きく異なることがある。
同責任者は、若者が仕事を「バラ色の眼鏡」で見ているケースがあり、想定していなかった困難に直面すると動揺し、短期間で退職することもあると分析する。
これは、教育機関から職場へ移行する際の「カルチャーショック」の一種ともいえる。
国が就職と職業訓練を一体的に支援
こうした雇用のミスマッチを解消するため、ベトナム内務省は全国統一型の国家就職取引プラットフォームの構築を進めている。
同プラットフォームでは、労働者、外国人労働者、労働紛争、労働災害などに関する基盤データを社会保障や住民データと連携させる構想である。
さらに今後は職業教育機関のデータとも連携し、「ワンストップ」で職業訓練のコース探しから仕事探しまで行える仕組みを目指している。
こうした取り組みによって、特に若者が自分に必要なスキルを学びながら、仕事を探せる環境を整える狙いである。
重要なのは「安全圏」から一歩踏み出すこと
一方、専門家は制度や行政による支援だけでは問題を解決できないと指摘する。
国家雇用サービスセンターの責任者は、行政機関は仕事の機会を提供し、方向性を示し、企業と労働者をつなぎ、必要な支援を行うことはできるものの、最終的に重要なのは本人に働く意思があるかどうかだと指摘する。
その上で、若者自身が「安全圏」から一歩踏み出し、積極的に機会をつかむ必要があるとの考えを示している。
また、人材関連企業の専門家は、大学卒業後に一般職や現場の仕事からスタートすること自体には問題がないと指摘する。
重要なのは、その間も専門的な職業能力を身につけ続けることである。短期的な給与や職種よりも、長期的に仕事を生み出す「稼ぐ力」を蓄積することが重要になる。
AI時代に必要なのは「学び続ける能力」
特に注目されるのが、AIによって労働市場そのものが急速に変化していることである。
ハノイ工科大学の専門家は、これからの若者にとって最も重要な能力は、大学の学位そのものではなく「自ら学ぶ力」になると指摘する。
技術や知識が急速に変化する現在、大学で取得した知識だけで生涯にわたって仕事を続けることは難しい。
必要なのは、単に本を読むことではない。自分で学習計画を立て、必要な情報を探し、得た知識を実際の仕事に応用し、市場の変化に合わせて自ら能力を更新していく力である。
AIの普及によって、これまで存在した仕事が変化する一方、新しい職種や業務も生まれている。こうした環境では、最初にどの仕事に就くかだけでなく、仕事をしながら新しい能力を身につけられるかどうかが、若者の長期的なキャリアを左右する可能性が高い。
ベトナムの労働市場が成長を続ける中、若者にとって重要なのは「条件の良い仕事を待つこと」だけではない。まず現場に入り、経験を積みながら自らの能力を高め、変化する市場に適応していく姿勢が、これまで以上に求められている。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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