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【経済】最低賃金が改定されても7月1日から給与が上がらない?

(C) VNEXPRESS

新たに発行された地域の最低賃金を規定する議定38号では、訓練を受けた労働者には最低賃金より少なくとも7%以上高い給料を支払うという規定が削除されたため、労働組合は、多くの労働者の賃金が上がらないのではないかと心配している。

1週間前に地域の最低賃金引き上げに関する政府の議定38号が発行されてから、ホーチミン市クチ県に所在するVietnam Samho社の労働組合代表であるグエン・タイン・アン氏は、7月1日以降の給与調整方法について交渉するため、企業代表者と2回にわたって会談した。しかし、アン氏は、会社が現在新入社員に支払っている最低給与額が473万VNDで、現行の地域の最低賃金より7%高く、新たな最低賃金の規定である468万VNDをも上回っているため、給与アップの交渉が思うように進まずにいる。

アン組合長によると、以前の議定では、訓練を受けた労働者には最低賃金から少なくとも7%高い給与を支払わなければならないという、非常に重要な規定が明確に記載されていた。これは、労働組合が企業と新入社員の基本給を交渉する際の基礎とされ、その後、新入社員は1年働くごとに5%昇給していた。

国が地域の最低賃金を改定する際に、企業は訓練を受けた労働者に対する規定を遵守するために、新入社員の給与を上げざるをえなかった。それによって、既存の社員の給与額も5%の間隔を維持するために引き上げられていた。

約1万人の従業員を抱えるVietnam Samho社の労働組合長は、訓練を受けた労働者への7%以上の増額規定が無くなれば、企業側は、地域の最低賃金を定めた新たな議定38号の最低賃金を5万VND上回っている現在の給与体系を変更する理由がなくなると心配している。

「今回の給与交渉は非常に大きなプレッシャーだ」とアン組合長は話す。労働者側は2年間給与の据え置きにより昇給を待ち望んでおり、企業側はコロナ後の生産活動に投資するためにコストを最大限削減したいと考えている。もし、双方の歩み寄りが出来なければ、労働争議に発展する可能性もある。

ホーチミン市ハイテクパークに入居するNidec Vietnamの労働組合長であるルー・キム・ホン氏も同様に、新たに発行された最低賃金の改定に関する議定による恩恵を受けられない労働者が多数出ることを心配している。

ホン氏によると現在の工場が支払っている給与の最低額は、新たに発行される議定の最低賃金を1%上回っている。2019年の労働法の規定と単純作業をおこなう労働者を保護するための最低賃金に関するガイドラインでは、訓練を受けた労働者(工場での実習を含む)は、企業と自主的に給与交渉ができるとされている。

「実際に企業と直接交渉できるような労働者はいませんよ。」とホン氏は話す。ホン氏によれば、これまで労働組合は10年以上に渡り、訓練を受けた労働者は最低賃金から少なくとも7%高い給与が支払われるという規定を根拠に新入社員の基本給を交渉してきた。その後、労働者は毎年5%ずつ昇給してきた。もし、この規定が無くなれば、企業側は賃金を据え置く権利があり、組合側は昇給を求める法的根拠を持たないことになる。

ホーチミン市の2つの企業の労働組合長の7月1日から労働者の賃金が上がらない可能性があるという懸念には、十分な根拠がある。労使関係研究センターの調査によれば、現在90%以上の企業の設定する最低給与額は、現行の最低賃金より7~10%高い。一方で、7月1日から適用される新しい最低賃金の上昇率は約6%に過ぎない。

労働・傷病兵・社会省ホーチミン市事務所のファン・アイン・タン所長は、訓練を受けた労働者の給与額は、最低賃金から7%以上高くなければならないとの規定の削除は、多くの専門機関が様々な側面から検討した結果だと説明する。

現在、労働組合の役割が認められ、訓練を受けた労働者の交渉力が向上しているので、給与額は、労使の交渉結果による合意が尊重されるべきだと考えられている。更に、パーセンテージを固定した規定は企業の給与方針に干渉しすぎることになるとも考えられている。

一方で、給与方針改革に関する議決27号と2019年の労働法では、どちらも”政府が給与テーブル作成の原則を発行する”という内容が削られ、企業と労働者が生産性と労働の結果に基づいて交渉によって給与を定めるとされている。そのため、7%の規定が無くても、市場の原理に基づいて両者が給与額に合意できるためのメカニズムを構築する必要がある。

ベトナム労働総同盟の元副会長であるマイ・ドゥック・チン氏は、2019年の労働法改正案について意見を述べた際に、各企業の労働組合の幹部は給与交渉のスキルに関して教育を受けておらず十分な能力がないため、7%規定と給与テーブル公表の規定を削除するのであれば、そのためのロードマップが必要だと述べた。なぜなら工場で働く労働者にとって、労働組合の交渉能力は非常に重要であるからだ。

「しかし、この提言は受け入れられませんでした。」とチン氏は話す。チン氏は、今回の最低賃金の改定において労働者に最大限のメリットを引き出すために、労働組合の幹部は、旧法の規定を持ち出して、交渉し、それより低くならないようにする必要があるとアドバイスする。

「私の経験では、労働者へのメリットになる条件を削除すると、集団的な反応が起こり、労働の安定性が脅かされることになりやすいです。」とチン氏は話す。更に、労働組合は、より多くの労働者が法律の規定よりも更に良い条件を受けられるように、地域や業種ごとの労働協約作成を進める必要があるともチン氏はアドバイスする。

チン氏によると、例えば2010年にビンズン省の縫製業労働組合は、『工場の最低賃金は地域の最低賃金を上回らなければならない』や、『提供する食事は市場価格に基づいて決めなければならない』といった労働者のメリットとなる条項を含んだ縫製業の集団労働協約を作成し、企業と締結した。その当時は、9社の経営者のみがこの労働協約に参加し、4社は参加を断ったが、結果的には、この労働協約が締結されると参加を拒否した企業も労働協約の規定を遵守しなければならなくなった。もし、この労働協約を守らなければ、ストライキが発生したり、労働者が集まらなくなったりしたからだ。

他にもチン氏は、企業の労働組合はまだ弱いため、最適な給与条件を交渉できるように上部の労働組合が助言やサポートをおこなう必要があると指摘する。

ベトナム労働総同盟のゴー・ズイ・ヒウ副会長は、議定38号の中には、労働者の利益となる規定は減らすことが出来ないと規定されていると指摘する。労働総同盟は、労働・傷病兵・社会省に対して、企業の労働組合が企業側と給与交渉をおこなう際の根拠を持てるように明確なガイドラインを提供するよう求めている。

出典:17/06/2022 VNEXPRESS
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