ハノイ市は6月22日、都市鉄道(メトロ)5路線の建設を同時に開始した。対象となるのは1号線、2号線、8号線、10号線、14号線で、総延長は300kmを超える。
ハノイ市当局は2030年までの完成を目指しており、交通インフラの整備にとどまらず、首都圏の都市構造そのものを再編する大型プロジェクトとして位置付けている。
総投資額1300兆VND超 都市鉄道ネットワーク形成へ転換点
ハノイ市人民委員会のブー・ダイ・タン主席は、5路線の同時着工について「首都の都市鉄道整備における重要な転換点である」と強調した。
5路線の概算総投資額は1300兆VNDを超える。
これまでのような個別路線ごとの整備段階から脱却し、市全域をカバーする統合的な都市鉄道ネットワークの形成に向けた第一歩となる。
ノイバイ空港や新都市圏を結ぶ広域交通網を構築
新たな路線は、ハノイ中心部と主要開発エリアを結ぶ計画である。
接続対象には、
- ノイバイ国際空港
- ハノイ駅
- ゴックホイ地区
- ホアラック地区
- トゥーラム地区
- コーロア地区
- オーシャンパーク地区
など、首都圏の成長拠点が含まれる。
ハノイ市は今回着工した5路線を2030年までに概ね完成させる方針だ。
将来的に18路線・総延長979kmを整備
ハノイ市の100年先を見据えた首都総合計画では、最終的に18路線、総延長979kmの都市鉄道網を整備する構想が示されている。
現在運行しているのは、
- 2A号線(カットリン-ハドン線)
- 3号線(ニョン-ハノイ駅線)の高架区間
の2路線のみである。
また2025年末には、
- 2号線(ナムタンロン-チャンフンダオ区間)
- 5号線(バンカオ-ホアラック区間)
の建設も開始されている。
今回の5路線を加えることで、市内の公共交通ネットワーク構築が大きく前進することになる。
「交通問題の解決」だけではない都市開発戦略
市当局は、都市鉄道を単なる交通インフラとしてではなく、首都開発の骨格となる戦略的インフラと位置付けている。
ハノイ市は今後、
- 9つの成長拠点
- 9つの都市中心地
- 9本の発展軸
- 8つの経済・都市環状圏
を基軸とした都市再編を進める計画であり、地下鉄網はその中核を担う。
都市鉄道による広域移動を前提として、住宅地、商業地、業務地区の配置を再構築する構想だ。
専門家「技術管理が最大の課題」
一方で専門家からは、技術面での課題も指摘されている。
ベトナム都市開発計画協会副会長のダオ・ゴック・ギエム博士は、5路線の同時建設はハノイ市当局の強い決意を示すものだと評価した。
その一方で、地下区間と高架区間が複雑に組み合わさる都市鉄道プロジェクトでは、施工技術や品質管理が極めて重要になると指摘する。
適切な技術管理と最新技術の導入が、計画通りの完成を左右するとの見方を示した。
地下鉄が都市の姿を変える
交通専門家は、ハノイ市の人口がすでに800万人を超える中、現在の地下鉄網では需要に十分対応できていないと指摘する。
交通渋滞や大気汚染、自家用車・バイクの増加が深刻化するなか、地下鉄は長期的な解決策として期待されている。
さらに地下鉄の価値は輸送力だけではない。
専門家は、「先進国の多くの都市では、地下鉄は単なる移動手段ではなく都市形成のツールとなっている」と説明する。
駅周辺には商業施設やサービス業、住宅開発が集積し、新たな都市中心地が形成されるケースが多い。
ハノイ市も今回の大規模な地下鉄整備を通じて、交通網の拡充だけでなく、首都の都市構造そのものを大きく変えようとしている。




















