東南アジア諸国連合(ASEAN)が発足59周年を迎える中、ベトナムのレ・ホアイ・チュン外相は、変化と競争が激しくなる国際情勢に対応するため、ASEANが重視すべき方向性として「成果」「強靭性」「備え」の3点を示した。ASEANを地域の安定を支える存在から、地域秩序を形成する主体へと発展させる考えである。
ASEAN経済規模は3.9兆USD、人口約7億人
7月31日、ベトナム外務省本部でASEAN設立59周年およびベトナムのASEAN加盟31周年を記念するASEAN旗掲揚式が開催された。式典にはレ・ホアイ・チュン外相が出席し、ASEANの歩みと今後の課題について述べた。
ASEANは1967年の発足以来、対立や分断ではなく対話と協力を重視することで地域統合を進めてきた。現在では約7億人の人口を抱え、経済規模は3兆9,000億USDに達する地域共同体へと成長している。
外相は、ASEANが域内統合、イノベーション、連結性、競争力を原動力として、活力ある統一市場として存在感を高めていると評価した。
一方、地政学的な緊張や世界経済の不確実性が高まる中、ASEANは新たな時代に入っていると指摘。フィリピンが議長国を務める2026年のASEANでは、より大きな集団的努力が求められるとの認識を示した。
「成果・強靭性・備え」を重視
チュン外相が示したASEANの3つの方向性は、「成果(Results)」「強靭性(Resilience)」「備え(Readiness)」である。
第1の「成果」については、ASEANの成功を会議や協議の回数ではなく、実際に市民が享受できる成果によって測るべきだとした。
具体的には、円滑な貿易、強固な域内連結性、より良い雇用、公共サービスの改善などを挙げた。
そのうえで、ASEANは「手続きから成果へ」「協議から共同した行動へ」「原則についての合意から行動についての合意へ」と転換する必要があると強調した。
地政学的変化に対応する「強靭性」
第2の「強靭性」は、ASEANが地政学的な不安定要因を乗り越え、共通利益を守り、戦略的自律性を維持するための基盤と位置付けた。
2026年は、東南アジア友好協力条約(TAC)締結50周年にも当たる。外相は、相互信頼と協力をさらに深めることが、ASEANの結束を維持するうえで重要だとの考えを示した。
ASEANが域外の大国間競争に左右されるのではなく、地域自身の利益を守るための協力体制を強化することが求められている。
AIや人材育成で「未来への備え」
第3の「備え」は、将来の変化を受け身で待つのではなく、積極的に対応する能力を意味する。
チュン外相は、イノベーションの促進、人材育成、責任あるテクノロジーの活用を進める必要性を指摘。こうした取り組みを通じて、ASEANの競争力と柔軟性を高め、将来の変化に対応できる地域を目指す考えを示した。
さらに、信頼の構築、協力関係の深化、ASEAN独自の地域的な解決策の開発を進めることで、ASEANは地域の安定に貢献するだけでなく、地域秩序そのものを形成する主体になれると強調した。
ベトナムにとってASEANは「共通の家」
ベトナムがASEANに加盟してから31年となることについて、チュン外相はASEANがベトナム外交における戦略的優先事項であり、外交政策の中心的な柱であると強調した。
同時にASEANは、ベトナムにとって単なる国際組織ではなく、「共通の家」であり、国際社会への統合を進めるうえで不可欠な存在だと位置付けた。
外相は、ベトナムとASEAN加盟国の将来は、ASEAN全体の成功と密接に結びついているとの認識を示した。
「強いASEANはベトナムにより多くの機会をもたらし、強いベトナムはASEAN共同体により大きく貢献できる」との考えを示し、今後もASEANとともに発展し、強靭で革新的、活力があり、人々を中心に据えたASEAN共同体の実現に貢献すると表明した。
ASEANを「地域秩序を形成する主体」へ
今回の発言で注目されるのは、ASEANの役割を単なる経済統合や地域安定の枠にとどめず、自ら地域の将来を形成する主体へと発展させようとしている点である。
世界的なサプライチェーンの再編、米中対立、デジタル化、AIの普及など、ASEANを取り巻く環境は大きく変化している。
こうした中で、ベトナムが掲げる「成果・強靭性・備え」の3つの方向性は、ASEANが外部環境の変化に対応するだけでなく、域内の連結性や人材、技術力を強化し、自ら成長の方向を決めていくための基本姿勢を示したものといえる。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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