ホーチミン市が、これまで十分に活用されてこなかった地下空間の開発を加速させようとしている。
ホーチミン市内では現在、地下鉄や道路トンネル、地下駐車場、技術インフラ、商業・サービス施設など、地下空間を利用する大型インフラ事業が進められている。一方、駅周辺やTOD(公共交通指向型開発)、新たな都市中心部などでは、隣接する土地や施設の地下空間を一体的につなぐための統一的な計画が不足している。
こうした状況を受け、ホーチミン市人民委員会は、企業が地下空間計画の概要を策定し、ホーチミン市人民委員会主席が1カ月以内に承認する仕組みを提案している。
地下空間の計画手続きを大幅に短縮
ホーチミン市では現在、地下空間を含む大規模なインフラ整備が複数同時に進められている。特に駅周辺やTOD、新たな都市中心部では、複数の施設や隣接する土地の地下部分を連携させる必要性が高まっている。
しかし、ホーチミン市全体を対象とした地下空間の総合的な計画はまだ整備されておらず、投資や管理、活用に関する統一的な基準も十分ではない。
また、都市・農村計画に関する現在の手続きでは、計画の策定、審査、承認に複数の段階を経る必要があり、一定の時間を要する。地下インフラ事業の進捗を早めるうえで、こうした手続きが課題となっていた。
そこでホーチミン市は、従来の「計画任務」の策定・審査・承認に代えて、「地下空間計画概要」を策定する方式を提案している。
この概要はホーチミン市人民委員会主席が承認し、策定期間は1カ月以内とする。その後、計画策定を担当する機関が能力を備えたコンサルティング会社を選定し、ホーチミン市都市計画・建築局が審査を担当する。地下空間計画そのものの審査期間も、必要書類がそろってから20日以内とする案である。
地上の土地不足を地下で補う
ホーチミン市では人口、建築物、経済活動が集中する一方、都市鉄道、駐車場、技術インフラ、浸水対策施設、物流センター、商業・サービス施設、交通結節点などの整備需要が拡大している。
特に中心部では土地が限られており、地上だけで都市機能を拡張することが難しくなっている。
そのため地下空間を適切に活用することで、都市の開発空間を広げるだけでなく、土地利用の競合を減らし、インフラ容量を高め、公共交通の接続性を向上させることが期待されている。
実際、ホーチミン市では高層建築物の地下に複数階の地下施設が設けられているほか、技術インフラや商業・サービス施設なども地下に整備されている。
しかし、現状ではそれぞれの施設が個別の事業として管理されているため、地下施設の位置や高さなどのデータが統一されていない。地下空間の対象範囲や深さについても、市として統一的な仕組みが整っていないのが実情である。
地下鉄やTODとの一体開発が焦点に
ホーチミン市建築家協会のチャン・トゥアン氏は、同市が地下鉄をはじめ、都市鉄道、道路トンネル、地下駐車場、技術施設、駅周辺の商業・サービス空間など、さまざまな地下インフラを本格的に整備する段階に入っていると指摘する。
一方で、地下空間の計画が各事業の進展に遅れてしまえば、施設ごとに別々の設計が行われ、隣接する施設との接続ができなくなる可能性がある。
例えば、最新の設備を備えた地下鉄駅が整備されても、その周辺の地下空間が活用されないケースが考えられる。また、道路トンネルが整備されても、地下駐車場や商業施設、周辺の公共施設と接続されなければ、地下空間全体としての利便性は高まらない。
地下空間の開発では、単に「何を地下に造るか」だけでなく、どこに造るのか、どの深さにするのか、どの施設と接続するのか、将来どのような用途に使うのかまで考える必要がある。
その意味で、計画概要の策定期間を1カ月以内とする今回の提案は、地下インフラ事業を迅速に進めながら、将来的な地下空間の利用方針を定めるための仕組みと位置づけられる。
地下空間を新たな都市開発の「階層」に
チャン氏は、ホーチミン市の提案について、地下空間を「開放」するための一歩になり得るとの見方を示している。
ただし、地下空間を本格的に都市開発へ組み込むには、計画手続きの短縮だけでは十分ではない。
長期的な視点を持った迅速な計画策定に加え、市内で共有できる地下空間データベースの構築、さらに企業が地下空間の開発や事業化に参加できる制度の整備も必要となる。
これらが整えば、地下空間は単なるインフラ施設の収容場所ではなく、ホーチミン市にとって地上とは別の新たな都市開発空間となる可能性がある。
中心部では駐車場だけでなく商業施設も
ホーチミン市人民委員会のグエン・バン・ドゥック主席も、市が地下空間の開発を加速させる機会を迎えているとの認識を示している。
地下空間については、20年以上にわたり計画上の課題が残されてきたが、都市開発に関する新たな法律によって、こうした問題を解消する機会が生まれているという。
市は今後、中心部のクアックティチャン交差点、レロイ通り、グエンフエ通り、ハムギー通りなどの一部地域で地下空間の計画を進める方針である。
そこで想定されているのは駐車場だけではない。地下にサービス施設や商業施設など複数の機能を組み合わせることで、収益を確保し、投資回収を可能にするとともに、民間資金を地下インフラ整備に呼び込むことも狙っている。
ホーチミン市にとって地下空間は、これまで十分に活用できていなかった「見えない都市空間」であった。しかし、都市鉄道やTODの整備が進む中、その地下をどのようにつなぎ、どのような都市機能を配置するかが、新たな都市開発の重要なテーマになりつつある。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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