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分析装置の藤本科学が現法設立
特注装置と技術サービスに強み

理化学商社であり自社で装置製造も手掛ける藤本科学が今年6月、ベトナムに現地法人の藤本サイエンスサイゴンを設立した。標準的な各種分析装置とフィルターの販売に加えて、特注装置の受注をスタートさせた。

理化学商社がベトナム進出
装置の製造や移送に強み

 商社として工場や研究所で使用する分析装置、計測装置、試験装置、工具や消耗品などを販売する藤本科学。その事業には同業他社と異なる特徴がある。

「お客様のご要望に合わせた各種特注装置の設計から製造、メンテナンスまでを請け負っています」

 同社にはそのための技術部門があり、図面の作成から装置の製造、顧客への操作のトレーニングなども行う。

「お客様が保有する機器・装置類は毎日使用されないものもあり、いざ使おうとした際に使用に耐え得るベストな状態でないことに悩まれていると想像しています。技術部門のサービスは点検・修理・メンテナンスを通して常にベストな状態に保つサービスです」

 また、工場や研究所などの移転に伴う装置の移送も代行している。分析装置や計測装置はセンシティブな機器なので、適切に移設して移転前と同じ性能を確保するのが難しい。それを各装置、各メーカーの仕様に準拠して代行するのだ。顧客は複数の業者との打合せなどが一切不要となる。

 このように商社でありながら自社での製造や独自の移送システムを持つ藤本科学の顧客は、化学メーカーや電子材料メーカーなどエレクトロニクス業界が多い。その他、医療・医薬、食品などの業界を含めて、多種多様な分析装置、測定装置、試験装置などを納入している。

「理化学商社とは聞きなれないでしょうが、学校の理科実験室にある機材や装置を取り扱うと思ってください。実際には研究所やラボで使用する装置ですね」

ベトナム事業は3本柱
日本での実績を当地で

 初めての海外進出は2012年、中国・上海に営業拠点となる現地法人を設立した。ゼロベースから市場を開拓し、数年は苦しんだが黒字化を達成。2018年には同じ中国の深センに営業所を設立した。現在の中国事業は安定し、顧客の約7割は日系企業でローカル企業が徐々に増えている。

「中国では化学メーカー、部品メーカー、アパレル系のテストセンターなどがお客様です」

 次に考えたのが東南アジアの拠点。多くの国を比較したが、長期スパンでの市場成長が期待できるとベトナムに決めた。「買って終わりではなく、メンテがあるととても助かる」といった顧客の声も後押しした。

 2023年6月15日に現地法人のFUJIMOTO SCIENCE SAIGON(FSSG)をホーチミン市に設立。事業は各メーカーの標準的な分析装置や試験装置の輸入販売、特注装置の受注、消耗品の中でもフィルターの販売を軸とした。

 標準的な装置や機器は日本、アジア、EU、アメリカから輸入通関を行ってベトナムで販売する。分析装置であれば「液体クロマトグラフ」、「分光光度計」、「示差熱熱重量同時測定装置」など数十種類を取り扱う。

 特注装置はベトナムで請け負い、日本で製造してベトナムに輸出する。藤本科学の実績としては、冷媒の冷却性能を測定する「冷却試験装置」、混合物から目的とする粉体を分離する「粉体用オートサンプラー」、背面にパスボックスを付けた各種ガスが置換可能な「特型グローブボックス」、液体を循環させて配管の腐食度を計る「腐食試験装置」などがある。

 これらはオーダーメイドなので価格は高くなり、初期投資が嵩むため、断念して標準製品を選ぶ顧客もいるそうだ。ただ、分析精度の上昇や作業効率の向上が図れるため、ベトナムでのニーズはあると考えている。

「また、フィルターは電子材料、食品、医療など使われる業界が多彩です。高品質で耐久性がある製品を中心に取り扱っています」

 上記の移送システムもベトナムで提供している。日本と同様に研究所や工場の移転、2ヶ所を1ヶ所に統合するなどで装置の移設が発生しているからだ。

同業他社にはできない仕事
ベトナムの潜在市場を実感

 ベトナムでは主に品質のテストセンター、電子材料メーカー、金属などの加工会社、食品関連企業などを顧客と考えており、各種装置であれば旧製品からのリプレイスや工場増設などでの新規納入を見込む。フィルターに関しては先のように幅広い業界での使用か想定できる。

 藤本科学は提案力が強く、顧客にヒアリングをしてニーズや困りごとを引き出すことから始める。日本では「痒い所に手が届く」と言われており、定期的に顧客を訪問する担当者も多い。それが技術部門へとつながっており、ベトナムでも同様のスタイルとする予定だ。

 FSSGの現在のスタッフは藤本氏を含めた日本人が3人、ベトナム人が2人。ベトナム人スタッフのNgo Thi Hongさんはこう語る。

「ベトナムにも分析装置の商社はありますが、販売するだけです。設計からワンストップでできるのはFSSGだけだと思います」

 事業は始まったばかりだが、将来は技術部門のスタッフがベトナム人エンジニアを育て、当地の加工企業やサプライヤーを使って特注装置をベトナムで製造したいと考えている。ベトナム市場を見てきた藤本社長もこう語る。

「同業となる理化学商社はベトナムで限られますし、自社で特殊な装置を製造でき、メンテナンスまでサポートできる企業は聞いたことがありません。FSSGの潜在マーケットは大きいと見ています」

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