電力計画VIIIの実行に向けEVN移管を提案
ベトナム商工省は、改定版の「第8次国家電力開発基本計画(PDP8)」に関する報告書の中で、国営電力グループのベトナム電力公社(EVN)を商工省の管轄下に移し、同省をEVNの国家所有者代表機関とする方針を政府に提案した。
背景にあるのは、電力需要が急速に増加する一方、発電所や送電網の整備に遅れが生じていることである。
商工省は、第8次国家電力計画(PDP8)の見直し後に計画を実行するためには、十分な人員と資源を確保するとともに、関係機関との調整を短縮する必要があるとしている。
「計画」と「実際の発電」には大きな隔たり
電力分野の専門家によれば、電力計画が承認されたからといって、実際に発電所が稼働するわけではない。
計画承認後には、投資準備、資金調達、用地取得、請負業者の選定、建設、系統接続、検査、運転開始など、多くの工程を経る必要がある。
そのため、一つの工程が遅れるだけでもプロジェクト全体の完成時期が後ろ倒しになる可能性がある。
特に電力分野では、発電所や送電網の一つのプロジェクトの遅れが、単なる個別事業の遅延にとどまらず、電力システム全体の供給能力に影響する。
商工省がEVNの管轄を同省に集約する案を示したのは、こうした電力計画の実行段階における調整を迅速化する狙いがある。
EVNの技術力や事業経験を活用
現在、電力産業に関する行政管理は商工省が担う一方、EVNの財務面については財務省が関与している。
ホーチミン市のエネルギー専門家は、EVNを商工省の管轄に移した場合、国家が実施する発電・送電プロジェクトについて、価格政策や技術面での調整を行いやすくなる可能性を指摘している。
EVNは国内の電力システムにおいて重要な役割を担う大規模企業であり、発電・送電設備の運営に関する技術者や、大規模な電力プロジェクトを実施してきた経験を持つ。
電力需要が急速に拡大する中、こうした技術力や運営能力を電力計画の実行に効率的に投入することが重要になるとの考えである。
一方で、プロジェクトの投資審査などでは、財務省も関与する必要があるとの指摘も出ている。
一方で「行政と企業の役割が混在する」との懸念
EVNを商工省の管轄に移す案については、別の問題を指摘する専門家もいる。
商工省は電力産業全体を監督する行政機関である。ところが同時にEVNの国家所有者代表機関となれば、電力市場のルールを作る側と、その市場で事業を行う大手国有企業を所有する側が同じ省に集まることになる。
例えば商工省は、EVNだけでなく国有企業、民間企業、外国企業など、電力市場に参加するすべての事業者に適用される政策や規制を策定する立場にある。
一方でEVNについては、国有資本の保全や企業としての効率的な経営を確保する責任も負うことになる。
このため、電力市場の透明性や利益相反の問題について慎重に検討する必要があるとの意見が出ている。
EVN再編の方向性とも関係
エネルギー専門家のグエン・フイ・ホアック氏は、今回の議論の最終的な目的は、単純に「EVNを商工省に移すこと」ではないと指摘する。
重要なのは、EVNが国家電力システムの中でより効果的に役割を果たせる仕組みを構築し、電力計画から実際の発電所建設までの時間を短縮することだという。
一方、9月15日にEVNと会談したファム・ザー・トゥック副首相も、EVNを競争力の高い大規模な国有経済グループへ再編することを戦略的な目標として示している。2030年までに、世界の大企業500社に入るベトナム企業3社の一つを目指す方針も示された。
そのため、EVNを単純に一つの省の管理下に置くことが、本当に企業としての競争力強化につながるのかという点も論点となる。
電力行政と企業経営をどう分けるか
グエン・フイ・ホアック氏は、電力行政を担う商工省が企業の機能まで直接担うべきではなく、行政による規制・監督と、電力システムの運営、企業による生産・事業活動を明確に分ける方向が重要だと指摘する。
ベトナムでは、従来EVNに属していた国家電力系統・電力市場の運営機能を切り離し、国家電力システム・電力市場運営総公社(NSMO)を設立する改革も進められてきた。これは、電力市場に参加する企業としてのEVNと、電力システム全体を運営する機能を分離し、透明性を高める方向の改革と位置付けられている。
今回のEVN移管案についても、問題の核心が行政手続きや政策上の障害にあるのであれば制度を改め、企業側の能力にあるのであれば企業の能力を高めるべきであり、行政機関の責任と企業経営の責任を同一視すべきではないとの指摘がある。
「EVNをどこが管轄するか」だけでは解決しない可能性
第8次国家電力計画(PDP8)では、発電所や送電網の整備をめぐり、投資手続き、土地、建設計画、投資家の選定、用地取得など、さまざまな課題が存在している。
そのため、EVNを商工省の管轄に移すことで調整の窓口を集約できたとしても、それだけで電力プロジェクトの遅れが解消するとは限らない。
今回の提案は、ベトナムが電力需要の急増に対応するため、「誰がEVNを管理するか」という組織論と、「どうすれば電力計画を実際の発電所・送電網につなげられるか」という実行力の問題を同時に問われていることを示している。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
ベトナム進出支援LAI VIEN





























