ベトナムの法整備が、「数多くの法律を制定する」ことから「質の高い法律を安定して運用する」方向へ転換しようとしている。
9月21日に開かれた国会常務委員会第6回会合で、チャン・タイン・マン国会議長は、2027年の法整備について、法律の制定そのものだけでなく、施行や実際の運用を重視する必要があるとの考えを示した。
背景には、近年の急速な法整備によって一定の成果があった一方、法案の準備不足や法改正の頻度など、制度を安定的に運用する上での課題も浮かんでいる。
「迅速な対応」と「頻繁な改正」は別
マン国会議長によると、これまでベトナムでは法整備を急速に進め、多くの制度上の障害を取り除いてきた。
一方で、法整備計画が何度も変更されたり、法案の準備が十分でないまま提出されたりするケースもあった。影響評価が不十分な案件や、審議日程の延期・撤回、簡略化された手続きによる対応が必要となった案件もあるという。
今後は、こうした問題を改善するため、法案を提出する段階で影響評価を十分に行い、必要な資料を整えることが求められる。
マン国会議長は、予測の不十分さを法整備計画の変更で補ったり、準備不足を簡略化された手続きで補ったりするべきではないと指摘した。
重要なのは、社会の変化に法律が迅速に対応することである。ただし、「迅速に対応すること」と「法律を頻繁に改正すること」は同じではない。
そのため、内容が十分に成熟していない法案や、既存の法律との役割分担が明確でないものについては、拙速に法制化しない方針も示された。
2027年も多数の法案を審議
2027年の法整備計画では、国会第16期第3回会期となる2027年5月に9件、第4回会期となる同年10月に12件の法律案を審議・可決する予定となっている。
政府などからは当初28件の案件が提案されたが、国会常務委員会側では、2027年の法整備計画として23件の法律・法令・決議案を予定する案を示している。
5月の会期では、国防法改正案や監察法改正案、人民検察院組織法の一部改正案、環境保護税法の一部改正案などが予定される。
10月の会期では、企業法改正案、労働安全衛生法改正案、道路交通秩序・安全法の一部改正案、科学技術・イノベーション法の一部改正案などが予定されている。
つまり、ベトナムが法整備そのものを縮小するわけではない。むしろ、必要な制度整備を続けながら、法案の準備段階と、その後の施行・運用に重点を移すという方向である。
法律だけでなく「実施できるか」を重視
今回の議論で注目されるのは、法律を制定することと、それを実際に機能させることを明確に区別している点である。
政府は9月にも、国会で成立した法律や決議を具体的に施行するための27件の関連文書について、各省庁などに作成を割り当てている。法律を成立させるだけでなく、施行に必要な細則を適切な時期までに整えることが課題となっている。
今後のベトナムでは、法律の本数や改正件数だけを見るのではなく、制度が現場でどの程度機能しているのかという「実施能力」が、これまで以上に重要になりそうである。
教科書不足でも問われた「予測」と「実行」
同じ21日、国会常務委員会では2026年8月の国民・有権者からの意見や要望に関する報告も審議された。
そこで取り上げられた問題の一つが、学校で使用する教科書の不足である。
教科書不足によって生徒の学習に支障が出ているほか、保護者の負担や不満にもつながっていると報告された。国会側からは、単に不足している教科書の種類を把握するだけでなく、実際に何人の生徒が教科書を必要としているのかを正確に把握する必要があるとの指摘も出た。
さらに、教科書不足をめぐって買い占めなどによる価格上昇の可能性についても言及された。
生活に直結する問題は「最後まで処理」
レ・ティエン・チャウ副首相は、地方行政の運営や教科書、学校給食など、国民生活に直接影響する問題について、政府の権限で対応できるものは最後まで処理し、対応が遅れた組織や個人の責任も明確にする必要があると強調した。
政府は教育・訓練省と協議し、教科書不足について9月25日までに解決するよう対応を進めている。
法律を作ることも重要だが、それだけでは社会の問題は解決しない。
今回の国会で示された「多く作る」から「良く、安定して機能させる」への転換は、法制度だけでなく、ベトナムの行政そのものが制度の制定から実行・運用へ重点を移そうとしていることを示す動きともいえる。
ベトナム経済の成長に伴って制度や行政の規模が拡大する中、今後は「どれだけ新しい法律を作ったか」だけでなく、「既存の法律をどれだけ安定して実行できるか」が問われることになりそうである。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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