ベトナム中部のフエ市で、日本の大学とフエ市による洪水対策・気候変動適応に関する研究が進められている。早稲田大学と筑波大学の専門家は、都市周辺にある自然の「水をためる能力」に着目し、洪水を単に排水するのではなく、都市全体で水を受け止める仕組みを取り入れる考え方を示した。
都市開発が進む中でも自然の貯水能力を維持・向上させることで、洪水リスクを抑えながらコンパクトな都市形成を目指す。
都市の外に「水をためる場所」を残す
9月21日、フエ市人民委員会のホアン・ハイ・ミン副主席は、早稲田大学と筑波大学の研究チームと面会し、同市における防災、洪水対策、気候変動への適応に関する研究・事業について協議した。
日本側の専門家が紹介したのは、都市周辺地域の貯水能力を活用した洪水管理モデルである。
近年のフエでは都市開発が進んでいるが、道路や住宅、その他の都市施設が増えることで、これまで雨水を受け止めていた土地の能力が失われる可能性がある。
今回の研究では、こうした自然の貯水能力を都市計画の中に組み込み、開発と洪水対策を両立させることを目指す。
プロジェクトの基本的な考え方は、都市を無秩序に拡大するのではなく、一定のエリアに集約してコンパクトに開発する一方、都市周辺に残る水の貯留機能を守り、必要に応じて高めることである。
フーン川流域の「貯水能力」を地図化
研究ではまず、フエ市を流れるフーン川の都市周辺流域について、どの程度の水をためることができるのかを示す「貯水能力マップ」の作成を目指す。
具体的には、水位と貯水量の関係を示すデータを整備するとともに、河川の水位上昇などによって水が逆流する状況も考慮し、実際にどの程度の貯水能力を確保できるのかを評価する。
さらに、このデータを都市開発の計画に活用する。
例えば新たな住宅地や都市施設を建設した場合、土地の改変によってどの程度、自然の貯水能力が失われるのかを算出。その減少分を補うために、どの程度の貯水機能を別の場所に確保すべきかを評価できる仕組みを構築する。
つまり、都市開発によって失われる「水をためる力」を数値化し、その分を別の対策で補うという考え方である。
40~60施設の運用データを活用
研究では、洪水に適応する分散型インフラについても検討する。
すでに整備されている約40~60の施設から実際の運用データを収集し、洪水対策施設の設計基準や運用・維持管理モデルの構築につなげる予定である。
また、新たな都市開発区域では、雨水を一時的に貯留するなどの「グリーンインフラ」の導入・検証も行う。
都市の建設密度を高めながら、同時に水をためる能力も確保する。都市開発と洪水対策を別々に考えるのではなく、一体的に計画することが今回の研究の大きな特徴である。
フエ市「研究結果を早期に実用化したい」
フエ市は、防災や気候変動への対応を経済・社会開発計画の重要課題の一つに位置付けている。
同市ではこれまでも洪水被害の軽減や河川の管理などに取り組んできた。特にフエは都市部だけでなく、世界遺産を含む歴史・文化資産を抱えていることから、洪水による被害を抑えることは都市政策上も重要な課題となっている。
ホアン・ハイ・ミン副主席は今回の研究について、フエの都市管理や都市計画、自然災害に適応した都市開発のニーズに合った実践的な取り組みだと評価。そのうえで、研究期間を短縮し、成果をできるだけ早く実際の都市政策に反映するよう求めた。
フエ市も関係する専門家や職員を研究に参加させ、研究チームとの連携を進める方針である。
また、すでに市内で実施されている関連プロジェクトのデータを有効活用し、研究の重複を避けながら投資効果を高める考えも示された。
スマートシティのデータ基盤にも接続
今回の研究は、洪水対策施設の整備だけで終わるものではない。
フエ市は、研究成果を既存の運営センターやデータシステム、スマートシティのプラットフォームと接続する構想を示している。
将来的には、洪水や自然災害に関するデータを蓄積し、災害の予測、状況の把握、対策の管理、意思決定などに活用するデータ基盤へと発展させる考えである。
「水を排除する」から「水と共存する」都市へ
洪水対策というと、堤防や排水設備によって「水を早く外へ出す」ことが一般的にイメージされる。
今回のフエでの研究が興味深いのは、それだけではなく、都市そのものに水を受け止める能力を持たせるという発想を取り入れている点にある。
都市開発によって自然の貯水能力が失われるのであれば、その影響を事前に把握し、別の場所で貯水機能を確保する。さらにグリーンインフラや分散型の施設を組み合わせる。
海面上昇や気候変動によって洪水リスクが高まる中、フエでは都市を水から守るだけでなく、都市の中に「水を受け止める余地」を残すことが、新たな都市づくりのテーマになりそうである。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
ベトナム進出支援LAI VIEN





























