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ベトナムで「移転価格」への警戒強まる 輸入急増・長期赤字企業を重点検査へ

輸出入の拠点となるベトナムの港湾
(C)THANH NIEN

ベトナムで、企業グループ内の取引を通じて利益を国外へ移す「移転価格」や租税回避への警戒が強まっている。

背景には、電子部品や機械、原材料などの輸入が大きく伸びる一方、国内での付加価値や輸出額が十分に拡大していない産業がある。政府は、単純な輸出入額の差だけで企業を問題視するのではなく、関連会社との取引価格や利益率などを分析し、リスクの高い企業を重点的に調査する方針である。

輸入拡大だけで「移転価格」とは限らない

ベトナムでは、コンピューター・電子製品・部品、機械設備などで輸入額が大きく、輸出額を上回る状況が続いている。

税関当局によると、7月前半だけでコンピューター・電子製品・部品の輸入額は約123億6,000万USDに達した。一方、輸出額は約65億5,000万USDと、輸入額の約半分にとどまった。

機械・設備・工具・部品についても、7月前半の輸入額は約31億9,000万USD、7月半ばまでの累計では約375億7,000万USDに達している。

ただし、こうした数字だけで異常と判断することはできない。

ベトナムでは製造業の原材料や部品、設備を海外から調達するケースが多く、輸入された製品が国内で加工され、最終的に輸出されるケースも少なくない。特に外国企業による投資が多い電子産業などでは、国境をまたぐサプライチェーンが構築されている。

重要なのは、輸入した1USD分の原材料や部品から、ベトナム国内でどれだけの付加価値が生み出され、その利益がどれだけ国内に残っているかである。

輸入が多くても問題とは限らない

経済専門家も、輸入額と輸出額の差だけを見て移転価格を判断することには慎重であるべきだと指摘する。

企業が新たな受注に対応するため原材料を先行して大量購入した場合や、原材料価格、為替、物流費、人件費などが変動した場合にも、輸入と輸出の金額には一時的な差が生じる。

特にベトナムが高い経済成長率を目指し、公共投資や製造業の設備投資が拡大する局面では、機械や建設資材などの輸入増加は自然な現象でもある。

そのため、

「輸入が多い=移転価格

とはならない。

一方で、輸入額の急増に加えて、利益率が異常に低い、長期間赤字が続いている、関連会社への支払いが多いといった特徴が重なる場合には、詳しい確認が必要となる。

関連会社から高値で購入し利益を圧縮する可能性

移転価格で典型的に問題となるのが、企業グループ内の取引価格を操作するケースである。

例えば、ベトナム法人が海外の関連会社から原材料を通常より高い価格で購入すれば、ベトナム法人のコストは増加する。一方、その分だけ利益は減少するため、ベトナム国内で納める法人税も少なくなる可能性がある。

ただし、これも高い価格で購入したという事実だけで移転価格と判断できるわけではない。

独立した企業同士の取引で成立する価格と比較し、経済的な合理性があるかどうかを検証する必要がある。

専門家は、国際価格などの比較基準が明確な化学品や樹脂原料などから重点的に確認することを提案している。

「輸入大・輸出小」企業を一律検査せず

政府が重視しているのは、企業を一律に調査するのではなく、リスクに応じて対象を絞り込むことである。

特に注目されるのは、

  • 輸入額が大きい、または急増している
  • 取引の多くが関連会社との取引である
  • 同業他社と比較して利益率が低い
  • 長期間にわたって赤字が続いている
  • 関連会社へのサービス料・ロイヤルティー・利払いが大きい
  • 関連会社からの輸入価格が高い

といった特徴を複数持つ企業である。

専門家は、こうした条件を移転価格の証拠ではなく、あくまで最初のスクリーニング材料として利用すべきだと指摘する。

企業の事業内容や機能、保有資産、負担するリスク、業界の利益率などを総合的に比較する必要があるためだ。

ベトナム企業にも広がる移転価格問題

移転価格への警戒は、外資系企業(FDI)だけを対象としたものではない。

ベトナム公安省によると、近年はベトナム企業でも海外に法人を設立し、複数の企業を経由して商品の価格を引き上げるなどの手法が確認されている。

7月末には、医療機器や医薬品を扱う企業を巡り、ベトナム、シンガポール、香港に複数の法人を設立し、医療機器などを企業間で売買することで価格を引き上げていたとして、公安当局が捜査に乗り出した事例も明らかになった。

こうした行為は税収を減少させるだけでなく、適正な価格で事業を行う企業との競争条件を歪める可能性がある。

税関・税務・銀行などのデータ連携が鍵

移転価格を効果的に取り締まるためには、企業の輸入額だけを見るのでは不十分である。

専門家は、税務、税関、銀行、企業登録、投資管理などのデータを連携させる必要性を指摘している。

例えば、ある企業について、

輸入価格 → 原材料 → 生産 → 売上 → 利益 → 関連会社への支払い → 海外への資金移動

という一連の流れを把握できれば、移転価格のリスクをより正確に判断できる。

また、同じ業種の独立企業と比較するための価格や利益率のデータベースを整備することも重要となる。

APAの活用で企業との税務紛争を抑制

移転価格を巡る企業と税務当局の紛争を減らす手段として、APA(事前確認制度)の活用も重要になる。

APAは、関連会社間取引について、将来の税務上の価格算定方法を企業と税務当局があらかじめ合意する仕組みである。

複雑な国際取引を行う企業にとっては、後になって税務当局から取引価格を否認されるリスクを抑えられるメリットがある。

ベトナム経済の国際化が進み、海外との取引や多国籍企業のサプライチェーンへの参加が拡大する中、移転価格への対応は今後さらに重要になりそうだ。

今回の政府の方針も、「輸入が多い企業を取り締まる」という単純なものではなく、データを使って不自然な利益移転の可能性が高い企業を選別する方向にあるといえる。

※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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